「前半からぶっ飛ばして行こう!」

横浜キヤノンイーグルスの沢木敬介監督(46)は、そんな指示で選手を送り出した。端的な言葉は、すぐにピッチ上で体現された。

日本代表SO田村優が蹴ったキックオフを、コベルコ神戸スティーラーズ(旧神戸製鋼)のFB山中亮平がノックオン。直後のスクラムから出たボールを田村がDFラインの裏に転がし、WTB松井の先制トライにつなげた。

開始わずか52秒だった。

同10分にも田村のグラバーキックをNO8アマナキ・レレイ・マフィが拾い、プロップ岡部崇人がつなぎ、最後はSH荒井康植がインゴールへ。見せ場は同12、14分。立て続けに2連続ノーホイッスルトライで、開始から14分で4トライを奪い、24-0と圧倒した。

トップリーグ(TL)時代、神戸には1勝8敗と相性が悪く、17年10月7日に31-26で勝ったのが唯一の勝利だった。昨年2月28日の対戦では10-73で完敗しており、見事に雪辱を果たした。

それでも沢木監督は厳しい。試合後のロッカールーム。選手を集め、こう伝えたという。

「最後はガス欠していたので、もうちょっとフィットネスが必要だ。次のレベルに行くためには、毎試合、毎試合、全員でチーム力を上げないといけない」

本拠地とする横浜での初試合で、かつて日本選手権7連覇を達成し、TL初代王者にも立った神戸から計8トライを奪う完勝劇。SO田村に、WTB松井、3トライを挙げてこの試合の優秀選手にも選ばれたCTB梶村らが躍動し、コロナ禍の中でも集まった1万1233人の大観衆を魅了した。

19年ワールドカップ(W杯)日本大会を沸かせた田村はこう言った。

「バランスを保とうと思えば、保てたんですけどね。ちょっと強引に進めた(攻撃した)場面もある。やると決めた以上、信じてやり抜くことも大切なんで。横浜には有名なスポーツチームがいくつもある。その中でもラグビーが存在感を出せる、いいスタートが切れた」

開幕2連勝で首位ブラックラムズ東京に勝ち点1差の2位。沢木監督は「前半は良かったんですけどね。まだまだ忍耐強さは、鍛えないといけない」。攻撃的な、ファンを魅了するラグビーを披露した新生イーグルス。台風の目になる予感を漂わせた。【益子浩一】