今季、B1滋賀レイクスターズから期限付き移籍で5シーズンぶりにB2山形ワイヴァンズに加入した村上駿斗(26)が、チームの昨季超えに貢献する。昨季、山形はミオドラグ・ライコビッチ・ヘッドコーチ(HC=50)の指揮の下、創部以来初のプレーオフ進出を果たした。2年連続のプレーオフ進出、念願のB1昇格に向け、新戦力が地元山形でブースターに勝ち星を届ける。【取材・構成 濱本神威】

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チームは現在17勝21敗で東地区5位。勝率.447で、現時点では昨季の勝率.517を下回る。だが村上は、「(チームは)ライコビッチHCが求めているものを少しずつコート上で表現できていると思います。個人的にも得点やアシストのオフェンス面でつながっていると思いますし、ディフェンスでもうまくいく時間帯が試合を通すごとに増えてきています」とチーム状況を分析した。昨季から残るのは河野誠司主将(32)を含めわずか4人。新戦力中心のチームは、17-18シーズンから在籍する河野や中島良史(31)を軸に、2年目となるライコビッチHCのバスケットに徐々になじんできている。

村上もライコビッチHCのバスケットに確かな手応えを感じている。今季はここまで35試合に出場し、1試合平均3・5アシスト。第22節福島との第2戦では10アシストをマークするなど、ゲームメークに一役買っている。村上は「ポイントガードやシューティングガードといったピックアンドロール(※注1)を使うボールハンドラーになる機会が多いです。僕はシュートを打つというよりもむしろパスを供給して仲間に打たせるという役目」。B1で養ったゲームメーク力をしっかり生かしている。

昨季はB1滋賀で59試合に出場。チームが挙げた23勝に大きく貢献した。高いレベルを肌で感じた村上は、B1とB2の違いを「ディフェンスの強度」と分析。「B2でもディフェンスへ高い意識を持って取り組むチームが増えていて、B1との差は縮まっていると感じますがやはり、フィジカルを生かした高いレベルでのディフェンスという部分が1番の違いだと思います」と語った。その上で、チームの課題として「リバウンド」を挙げた。村上は「オフェンスリバウンド(攻撃側が奪うリバウンド)を多く与えている。いいディフェンスをしても相手に飛び込まれて簡単に2点取られてしまう。ディフェンスをした後にしっかり(リバウンドを)取り切ることが鍵」。チームのディフェンスリバウンド(守備側が奪うリバウンド)は、第23節終了時点でB2・14チーム中11位。ディフェンスリバウンドを奪えないため、ペイントエリア内では相手優位の場面が多い。また、オフェンスリバウンドも全体11位と低い。ディフェンスリバウンドでボールを保持して攻撃につなげ、シュートを外してもオフェンスリバウンドを奪って再度攻撃することが今後の課題だ。

さらに村上はB1昇格の鍵として「シュート決定率」を挙げた。「簡単なことではないですが、個人としてもチームとしてもシュートを、特に3点シュート(3P)の確率を上げることは、大きな鍵になると思います」。チームの武器である3P成功率は33・3%で、B2で5位と高いが、2点シュートの成功率は41・9%で12位と、3Pライン内での決定力が低い。3P決定率をさらに高めることで、3Pラインやペイントエリア内での動きをもっと自由にしていきたい。村上は「アタックするか引き寄せて周りを生かすかの状況判断をして、できるだけ良いシュートをオープンで打たせたい」。さらに勝利を重ねるための2つの鍵を意識して周りを生かしていく。

地元山形へ、恩返しのシーズンだ。村上は「ルーキーシーズンでこの世界に入る時に、最初に声をかけてチャンスをくださったチームに恩返しとして1つでも多くの勝利を挙げようと取り組んでいます」。コート上では常に自分の持っているものを全部出すことを考えている。また、山形出身であるからこそ、オフコートでも人一倍の責任感を抱く。「地元出身ということで、特に同じ山形出身のブースターの皆さんからは注目していただける立場だと思っています。プレーだけではなく、立ち居振る舞いや発言などコート外のところでも子どもたちのお手本になるような選手になりたいと思っています」。山形を勝利に導くため、使命感を持ってプレーする。

2月末に行われた第23節越谷戦で連勝。第17節熊本戦から続いていた連敗を「8」で止め、チームは上昇のきっかけをつかんだ。村上は「ライコビッチHCのバスケットに練習から挑戦し、試合で表現していくことの積み重ねでしかチームは良くなっていかないと思います。それを今季最後まで徹底していきたい」と気を引き締めた。山形のブースターの思いを背に、全身全霊で今季を戦い抜く。

※注1 「ピックアンドロール」とは、ボールを持っている選手をマークしている選手に対し、スクリーン(壁)を仕掛けて(ピック)、守備をしている選手のマークを遅らせ、ボールを持った選手の移動の自由度を増すとともに、壁となっている選手が方向転換し、守備をしている選手の進路をふさぎ、自らのフリースペースへ動いて(ロール)パスを受けるプレー。

◆村上駿斗(むらかみ・しゅんと)1996年(平8)2月17日生まれ、山形県出身。山形南高から第7回スラムダンク奨学生としてサウス・ケント・スクールに入学。15年7月から山形でプレーし、広島-福岡-滋賀。B1での経験を得て5シーズンぶりに山形に復帰した。185センチ、85キロ。