ショートプログラム(SP)首位の宇野昌磨(24=トヨタ自動車)が初優勝を飾った。

フリー202・85点を記録し、世界歴代3位の合計312・48点。SP、フリー、合計の全てで自己ベストを更新した。場内インタビューでは「なかなか優勝をとったことがなかった。初めて世界選手権で1位になれたことがうれしく思います」と喜びを口にした。

日本男子の優勝は17年の羽生結弦以来5年ぶりで、高橋大輔、羽生に次ぐ3人目の世界王者となった。女子の坂本花織(シスメックス)とともに世界の頂点に立ち、日本勢の男女アベック優勝は14年(羽生結弦、浅田真央)以来の快挙となった。鍵山優真(18=オリエンタルバイオ/星槎)が2位に入った。

1つ1つのジャンプを決める度に、拍手と歓声が大きくなった。冒頭のループに始まり、サルコー、トーループの4回転。演技終盤こそミスが出たが、最後まで全身で表現し続けた。笑顔に充実感がにじんだ。

「初めて世界選手権で1位になれたこと、うれしく思います」。

全ての要素をこだわり抜いた「ボレロ」だった。ステファン・ランビエル・コーチが振り付けを手掛け、滑るのは今季限りの予定。首位発進を決めた2日前のSP後も、こう明かした。

「もちろん優勝したい気持ちは心の何%かあると思うんですけれど、僕の今年のフリーはやはり、このショートのように終わった後にすがすがしい気持ちで『今回はすごく良かった』と言い切れる演技はまだ1回もない。何よりジャンプ以外の部分が、おろそかになっていることが多い。本当に最後の演技。ランビエル・コーチにしっかり納得してもらえるような演技をしたいと思っています」

今大会は世界選手権3連覇中で北京五輪金メダルのネーサン・チェン(米国)が欠場。世界の頂に立っても向上心はあふれ出る。SP後には将来を描いた。

「目標にしている選手像は、ネーサン・チェン選手のような選手になること。一番難しい(ジャンプ)構成の選手が一番安定している。そんな選手が4年間、ずっといた。1人やれているということは、僕も必ずやれることじゃないかと思う。まずはそこを目指しています。その後というのも、大きくは考えていないけれど、可能な限り、次の年、その次の年と、新しい物に挑戦し、どんどん成長していきたい」

宇野の挑戦は続いていく。(モンペリエ=松本航)