東京オリンピック(五輪)個人総合金メダルで、日本のエース、橋本大輝(21=順大)が世界王者を奪還だ。
男子個人総合決勝で、6種目合計87・198点で、世界選手権初優勝を飾った。日本勢の同種目制覇は15年グラスゴー大会の内村航平以来5人目。
東京五輪代表の谷川航(26=セントラルスポーツ)は85・231点で初の表彰台となる銅メダルを獲得した。日本勢のダブル表彰台は、14年南寧大会で、内村航平が金、田中佑典が銅メダルを獲得して以来8年ぶりとなった。
微動だにしない着地だった。最終種目の鉄棒。金メダルには14・000点が必要で、団体決勝で落下した時は13・133点だ。もう落下は絶対にできない。そのため、団体決勝で落下したF難度の「リューキン」は封印した。そして、「最後、めちゃくちゃ狙いにいった」着地を完全に止めた。
得点14・433点が表示されると、思わず声とともに両手を突き上げた。「止めた瞬間に最高って思った。これが(試合を)締めるっていうことなんだな」。声が震え、ようやくエースとしての責任を果たせた喜びに浸った。
この日のための着地だった。21年東京五輪で初の金メダルを獲得したわずか2カ月後。北九州で開かれた世界選手権で、五輪王者の橋本は、中国の張博恒に敗れ銀メダルだった。その差、0・017点。鉄棒で着地が数センチ動いた差だと言われた。
代表のアドバイザリーコーチに就任した内村航平さんからも、ことあるごとに「着地を止めることが世界につながる」と、口酸っぱくたたき込まれた。その着地をぴたりと止め、北九州で敗れた張博恒に0・433点の差をつけ雪辱を果たした。
大会前の英国での事前合宿で、両手首を痛めた。予選ではあん馬で落下、団体決勝では鉄棒で落下し、今大会、公言していた「最優先は団体の金メダル」を逃した。「自分のために周りに迷惑をかけた」と責任を感じていた。
この日、課題だった2種目目のあん馬を、出場選手中最高の14・333点をマークし、克服した、水鳥寿思代表監督も「鬼門のあん馬を通したのが大きい」と、その気持ちの強さを絶賛した。内村さんまで脈々と受け継がれてきたのが「6種目をやって初めて体操」という体操ニッポンの美学だ。個人総合だけは譲れない。体操ニッポンを支えるエースとして、決して負けられない強い気持ちで頂点を奪い返した。


