世界女王の藤波朱理（19＝日体大2年）が優勝で「119連勝」を達成し、レジェンドの大記録に肩を並べた。同じ階級でオリンピック（五輪）3連覇など実績を積み重ね“霊長類最強女子”といわれた吉田沙保里が樹立した119連勝（01～08年）に到達。今大会を116連勝で迎え、準々決勝、準決勝、決勝で3勝を新たに積み上げた。

決勝では第1ピリオドの2分48秒、インド選手に10－0でテクニカルフォール勝ちした。

日本協会が公認している藤波の連勝記録は、中学2年の17年9月から続く。全日本女子オープン選手権（中学生48キロ級）から白星だけを積み重ね、21年10月の世界選手権では史上5人目の高校生女王に。内容も4試合すべてテクニカルフォール勝ち＆無失点という無類の強さだった。

昨年6月には明治杯を2連覇。決勝で節目の100連勝に届いた。日体大のコーチで、三重県から上京した昨春から2人で暮らすセコンドの父俊一さんに「父の日」の金メダルを贈り、年末には全日本選手権も完勝。今年もクロアチアやブルガリアの国際大会を制して116連勝まで数字を伸ばし、同郷でもある吉田の記録に並ぶ快挙に“王手”をかけていた。

注目される連勝に関しては、かつて「そう言っていただくことが多いんですけど、自分が強くなることに集中しているので、そんなに意識していなくて。過去のことなので、前だけ向いて。目の前の試合で勝つことしか、自分自身を高めていくしか考えていません」と話すなど、マットに集中している。

また、吉田の記録が世界の列強相手である事実に対し、自身は国内の中学時代からと自覚。比較する気もないが、結果を見れば、近年は国内外トップの相手でも一蹴する強さだ。国内の序列も、東京五輪の金メダリスト志土地（旧姓向田）真優（ジェイテクト）をリードしている。

現役最強の世界女王。次は、五輪4連覇で国民栄誉賞の伊調馨が打ち立てた189連勝が期待される。しかし見据えるは来夏の夢舞台、五輪だ。「無敗でパリまで行って金メダルを取りたい」という目標へ、この119連勝など単なる通過点でしかない。【木下淳】

◆藤波朱理（ふじなみ・あかり）2003年（平15）11月11日、三重県四日市市生まれ。88年ソウル五輪代表候補だった父俊一コーチの影響で4歳から競技を始める。中学2年の全国大会（17年6月）決勝で伊藤海に負けて以来、全勝。いなべ総合学園高から今春、日体大へ。総合格闘家の兄勇飛（26）も元選手で17年の世界選手権男子フリースタイル70キロ級3位。大学の同じクラスには北京五輪スノーボード日本代表の三木つばきがいる。164センチ。