リーグ2位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(東京ベイ)が悲願の初優勝を飾った。

同1位で2連覇を狙った埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉)に17-15で勝利。トップイーストリーグ(2部)時代の12年に入団した元日本代表CTB立川理道主将(33)が「プレーヤー・オブ・ザ・マッチ」を獲得した。

南アフリカ出身のフラン・ルディケ・ヘッドコーチ(HC、55)と7季目のコンビで昨季3位から躍進。チームのファン「オレンジアーミー」とともに、創設45年で頂点に立った。

   ◇   ◇   ◇

国立の客席を同じ色で染めたオレンジアーミーが「5、4、3、2、1…」と声で合図を送った。

後半40分を伝えるフォーンを聞き、SOバーナード・フォーリーが大きくボールを蹴り出した。

試合前に選手全員で見た、F1の優勝シーンの映像は現実になった。トロフィーを掲げた立川は「オレンジアーミーが最後まで力になってくれた」と感謝を込めた。

前身のトップリーグ最終年だった21年。リーグ戦全7試合で敵味方関係なく、観客にオレンジのベースボールシャツを配った。

通称「#オレンジでいこう作戦」は業界で話題になった。

体当たりから始まった。

ラグビー一色に染まった19年秋のW杯日本大会。その直後、東京駅にほど近いクボタ東京本社の一室で“面談”が行われた。

石川充ゼネラルマネジャー(GM)、広報担当者らが迎えたのはファン。「女性」「W杯からのファン」など、属性別に4人1組程度を招き、複数回にわたって本音を聞いた。

お菓子をほお張りながらの意見交換から「オレンジアーミー」が生まれた。

石川GM「(音楽グループ)BTSが人気で、ファンをアーミーと呼ぶ話になりました。『“オレンジアーミー”なんかいいよね。やってまえ!』となり…」

ジャージーには蛍光色を取り入れた。

石川GM「目立つし、膨張色。日本で一番強いFWにしたい思いを込めました」

ラグビー界の通例は度外視した。

今季のテーマは「F1」。選手がドライバー、スタッフがピットクルー、燃料を注ぐのがオレンジアーミーと位置付けた。

プレーオフ進出決定後、5月上旬の市原合宿では選手も「ゴーカート」で結束。掲げたテーマは、決勝当日までぶれなかった。

チームに携わる全員が1つの方向を向いた。立川は「文化をつくり、アイデンティティー(自分たちらしさ)を強く感じられている」とうなずいた。来季も続投のルディケHCとともに、理想を追う旅は続く。【松本航】