パリへ王手をかけた。6大会連続五輪出場を目指す女子日本代表(世界ランキング8位)が、開幕5連勝を飾った。同14位のベルギーを3-0で下し、5戦連続ストレート勝ちを決めた。司令塔の関菜々巳(24=東レ)が、ミドルブロッカー(MB)を絡めた多彩なトスワークで相手守備を翻弄(ほんろう)。攻撃陣をけん引した。23日の同1位トルコ戦にセットカウント3-1以内で勝てば、来夏のパリ五輪切符を手にする。

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パリ切符に王手をかけても、セッター関の目は次の一戦だけを見据えていた。「この後の2戦のために、ずっとやってきたようなもの。1人1人が自分の役割をしっかり認識して、チームのために戦っていきたい」。トルコのバルガス、ブラジルのギマラエスらのように突出した得点源はいない。それぞれの力を全力で引き出して勝利につなげてきたからこそ、大一番を前に足元を見つめ直した。

絶対的な個に頼らず、多彩に攻める日本の攻撃を支える。得意とするのはMBを交えた強気なトスワークからの速攻。この日も第1セットの頭に選択したのはMB山田だった。相手の意表を突いた一手で先制点を挙げて勢いづけると、リズムをつかみたい中盤には、エース古賀や井上らの左右からのスパイクに託した。各セット終盤に守備がサイドに寄るのを見れば、再び積極的に中央からの攻撃を選択。第3Sには自ら2アタックも決めた。相手守備を翻弄(ほんろう)し続け「ずっとB(クイック)が決まっていたので、そこをベースに組み立てました」と大胆さをのぞかせた。

古賀らアウトサイドヒッターに偏らない攻撃手となるMBの速攻だが、武器として確立するまでには思い悩んできた。「ミドル中心のチームだった」という千葉・柏井高時代に培った技術をひっさげて17年にVリーグ東レに入団。しかし19年の初代表入り後、世界のブロックの高さに苦戦した。「ただ単に無謀なだけじゃないか」「私の持ち味って何だろう」と戸惑うこともあった。

そんな時、背中を押してくれたのは先輩たちからの言葉だった。東レでは、元代表セッター中道瞳さんに「それ(ミドル攻撃)があっての関菜々巳だから」と諭された。今大会も直近2試合を会場で見てくれ、関自身が納得のいかないプレーと感じていた中で、「真ん中のいいテンポのところが決まると乗って来れるはずだよ」と勇気づけてくれた。

セッター出身の真鍋監督にも「まずはミドル。真ん中の攻撃が通るかどうかが重要」と、常々説かれてきた。目標のベスト4に届かなかったネーションズリーグ以降は、MB陣との綿密なコミュニケーションで自信を深め、「絶対大丈夫っていう気持ちがある。終盤でも選択肢の1つとして残ってるのが大きい」とうなずいた。

いよいよ最後のヤマ場がやってくる。「常に(主将の古賀)紗理那さんが言っている『チームで勝つ』を体現する」。司令塔は仲間を信じ、パリへのトスを上げ続ける。【勝部晃多】

◆関菜々巳(せき・ななみ)1999年(平11)6月12日、千葉・船橋市生まれ。姉の影響で小2で競技を始め、柏井高では3年時に主将として全国大会に出場。17年に東レに入団し、19年に初の代表入り。21年東京五輪出場は逃すも、22年の世界選手権でスタメンに定着し、チームの5位に貢献。171センチ、62キロ。

◆ミドルブロッカー(MB)とは 前衛のセンターで主に相手のアタックをブロックする役割を担う。高さを生かした中央での速攻は、アウトサイドヒッターのスパイクへのマークを散らせる一方で、相手ブロックにかかるリスクを伴う。守備の要に加え、高い攻撃力とスピードも求められる。

◆23日に日本が五輪切符を決めるには トルコに3-0、3-1で勝利した場合、勝ち点が18となり、最終日24日のブラジル戦を待たずに上位2枠入りが決まり、五輪出場権を得る。ここまででパリ五輪出場の可能性があるのは5戦全勝の日本、トルコと4勝1敗のブラジルの3カ国。ブラジルが残すベルギー戦と日本戦に3-0または3-1で連勝して6勝1敗とし日本と並んだ場合も、勝ち点は最大17となるため。