男子個人総合が行われ、東京五輪金メダリストの橋本大輝(22=順大)が6種目合計86・132点で2連覇を飾った。連覇は史上4人目の快挙で、09年~15年大会まで6連覇した内村航平以来となった。1種目目の床運動で着地が乱れて出遅れたが、ミスを引きずらずに以降は好演技を並べて快勝した。団体総合との2冠を達成。千葉健太(セントラルスポーツ)は4位だった。
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その姿が重圧を物語っていた。順位に関係なく、ライバルたちの好演技を見つめ、拍手を送る。それが橋本のスタイルだった。この日選んだのは遮断。他選手の演技中は羽織った上着のフードをかぶって、「演技の良いイメージだけを描いていた」と情報を絶った。
最初の床運動で着地が大きく乱れた。いきなり追い込まれ、以降は自分とだけ向き合うと慣例を変えた。続くあん馬で悪い流れを切り、4種目目の跳馬では雄大に舞った。着地も完璧で15・000点の高得点を引き出す。後は後続を突き放すだけ。最終の鉄棒で優勝を確認する着地を決めると、ほっとしたように「よかったぁ」とようやく表情を緩めた。
過去2年、金メダルを争った張博恒(中国)が不在。勝って当然の状況に、「簡単じゃない」と苦しんできた。五輪を含めて8年連続世界一の内村が常に引き合いに出される事も、悩みを深めた。「何をやっても比較される」と眠れなくなることもあった。
1月に腰の疲労骨折が判明し、リハビリ過程で基礎から突き詰めた。昨日できないことが今日はできた。初心に重なるうれしさが、己に関心を向かせた。「毎年自分を超えていくことが、一番合っている」。比べるのは、できなかった過去の自分で良い。
体操選手では大柄で着地の際に腰にかかる負担も大きかった。さらに、その技の正確性ゆえに酷使される部位も同じになった。必然とも言えた骨折に、今年は骨盤と股関節を上手に使い、衝撃をうまく逃がしながら着地できる動きを徹底してきた。この日は床運動以降の残り5種目で、全て足元は乱れなかった。
「航平さんを超えられるのは航平さんだけ」。3度目の世界王者となり、ようやく言葉にできた。そこに込めたのは卑屈さではなく、敬意であり、翻って自分への確信だろう。同じように「橋本大輝を超えられるのは橋本大輝だけ」でいい。来夏のパリ、今日のこの日の自分に勝った先に、2連覇がある。
◆橋本大輝(はしもと・だいき)2001年(平13)8月7日、千葉県成田市生まれ。6歳で佐原ジュニアで競技を開始。千葉・市船橋高入学後に急成長。高校生として史上2人目の出場となった19年世界選手権で団体総合銅に貢献。20年順大入学。21年の全日本選手権とNHK杯で初優勝し、東京五輪代表。個人総合の金は日本体操界通算100個目のメダル、種目別鉄棒での金は101個目となった。22年世界選手権では個人総合初制覇。167センチ。


