国際車いすバスケットボール連盟(IWBF)男子U23世界選手権が12日からブラジル・サンパウロで行われる。22年の前回大会で初優勝した日本は、まずは強豪ぞろいの予選B組を突破して、連覇に挑む。10代5人が参加する若き12人の中に、本格的に競技を開始して1年ほどで抜てきされた16歳の久我太一(埼玉ライオンズ=都足立高2年)がいる。
◇ ◇ ◇
小4だった2018年(平30)10月25日、自宅リビングで逆立ちの練習をして2度転倒。背中から腰をちゃぶ台にぶつけると、立つことも、歩くこともできなくなった。
今回、そのリビングで取材をするうちに「初めて話すけど」と語り出した。
近所の学童野球「梅田ヤングスターズ」に入って3年目。小4の春に初ヒットを放つと、ますます面白くなった。毎朝、自宅前のティー打撃が日課で、その日は今までにない手応えがあった。「これなら打てる」と、週末のチームの練習を楽しみにしていた中での事故だった。
救急搬送された大学病院で、脊髄梗塞と診断された。症例が少なく、治療法はないと告げられた。1カ月後に厚木市の神奈川リハビリテーション病院に転院。車いす生活のための訓練が主で、徹底的に体の柔軟性を高めた。7カ月の入院中、担当の理学療法士から観戦に誘われた車いすバスケの大会で、埼玉ライオンズが優勝した。「みんな障がいがあるのに、なんてかっこいいんだろう」。
退院後、水泳、陸上、チェアスキーなど、あらゆる障がい者スポーツを体験した。野球に近いソフトボールは特に楽しく、大人のチーム「グリッターズ」に入れてもらうと、全国大会でMVPに選ばれた。スポーツへの欲求は高まるばかりで、チームにバスケットの経験者が多かったこともあり、練習会などに参加。「捕って、投げて、走って、止まる。ソフトとバスケは似ていて、どんどん面白くなっていった」。都足立高入学後に埼玉ライオンズの門をたたいた。
「強いライオンズに入れてもらった以上、先輩に追いつきたかったし、遅れたくもない」と週5日、都内の自宅からからさいたま市などで行われる練習に通う。日常用車いすに乗り、競技車を押し、歩きスマホの乗客に戸惑いながら、電車とバスを乗り継ぐ。顔なじみになった各駅の係員への感謝は尽きない。
今年1月の天皇杯日本選手権のころには出場機会が増えた。スピードを生かして、得点源をマークするのが主な役割で、U23日本代表でも期待されている。「自分がやるべきプレーをやりきりながら、新しいことも挑戦したい。もっと点をとりたい」。日々の練習でつかんだ手応えをもっともっと試してみたい。11人の仲間とともに、ブラジルの大地で。【久我悟】
◆久我太一(くが・たいち)2008年(平20)7月30日生まれ、東京都出身。足立四中1年時に全日本車いすソフトボール選手権MVP。同3年時に全国車いすマラソンユースの部優勝。今年1月の天皇杯日本車いすバスケットボール選手権で個人賞。父悟は日刊スポーツ記者。
◆車いすバスケットボール 1チーム5人、10分4クオータ制、コートの大きさ、ゴールの高さ、ボールの大きさは一般のバスケットと同じ。障がいの程度によって1・0(重い)~4・5(軽い)の持ち点が定められ、5人合計14点以内で編成する。久我は持ち点1・5。ボールを保持して車輪を3回押したらトラベリング。ダブルドリブルはない。男子のフル代表は21年東京パラリンピックで銀メダルを獲得。24年パリは出場権を逃した。
◆IWBF男子U23世界選手権 4年に1度開催の世代別大会で6月12~20日までブラジル・サンパウロで行われる。日本は14歳の森岡煌陽(広島Rise=三原五中3年)を最年少に高校生4人も選出。12カ国参加で、日本は予選B組(米国、タイ、英国、イタリア、南アフリカ)から上位2チームが進出する決勝トーナメントを目指す。今年4回目で日本は21年(実施は22年)優勝、17年4位(優勝英国)、13年9位(同ドイツ)。
<男子U23車いすバスケットボール日本代表 コメント>
▼【スタッフ】 中井健豪ヘッドコーチ(41)「昨年秋のアジアオセアニア予選、今春の合宿を通じてこのチームの集大成になる大会。選手と話し合って、ベスト4、メダルラウンド進出を目標に掲げました。このチームには集大成でも、選手たちのバスケ人生は始まったばかり。『バスケやっててよかった』と思えるように導きたいし、世界に向かって戦い、成長する姿を見守りたいです」。土子大輔アシスタントコーチ、小森峻トレーナー、齊藤匠トレーナー、横瀬英里子コーディネーター
▼【選手】(背番号、選手名、年齢=持ち点、所属チーム、所属先)
【14】谷口拓磨主将(20=2.0、薩摩ぼっけもん、鹿児島国際大)「年齢差があっても自分の思っていることを、意見交換できるチームです。リーダーとして引っ張っていきたい。頑張ります」
【0】中澤煌河(16=3.5、バダーズ函館元町ライオンズ車いすバスケットボールクラブ=函館有斗高)「世界大会は初めてです。得意のシュートで貢献したいです」
【1】小山大斗(20=3.5、富山県車椅子バスケットボールクラブ、オー・エル・エム・デジタル)「大きな舞台に立てることを感謝しています。スピードと得点力でチームに貢献したいです」
【3】望月悠生(22=2.5、埼玉ライオンズ、青学大)「自分の持ち味のスピードを生かしたいです。チーム一丸となって頑張ります。応援よろしくお願いします」
【15】中村凌(17=1.5、富山県車椅子バスケットボールクラブ、大門高)「ディフェンスで精いっぱいチームに貢献したいです」
【20】渡辺将斗(21=4.0、神奈川VANGUARDS、桐蔭横浜大)「世界選手権は初めてです。海外の選手とできる貴重な機会なので、楽しんでプレーしたいです」
【23】岩田晋作(20=4.5、富山県車椅子バスケットボールクラブ、あいおいニッセイ同和損害保険)「わくわくしています。思い切りあるプレーと、ここぞの集中力と爆発力で頑張ります」
【37】足達飛馬(21=1.5、大分コウセイWBC、豊後大野市役所)「試合に出たらシュート力を生かして、出てない時は応援して、少しでもチームに貢献したいです」
【38】森岡煌陽(14=2.0、広島Rise、三原五中)「試合で得点して、ベンチでは精いっぱい声を出して、12人で頑張りたいです」
【70】久我太一(16=1.5、埼玉ライオンズ、都足立高)「初めての世界大会ですごく楽しみです。スピードを生かしたプレーができるよう頑張ります」
【77】岡田壮矢(18=3.5、奈良DEER、阪南大)「全力でプレーして、悔いが残らないように頑張ります」
【89】有吉奏太(17=2.5、宮城MAX、仙台三桜高)「いい流れの時も、悪い流れの時も、慌てることなく頑張りたいです」


