<テニス:AIGジャパン・オープン>◇4日目◇2日◇東京・有明テニスの森公園

 日本テニス界の新星で、世界84位の錦織圭(18=ソニー)の快進撃が止まった。フランスNO・1で同13位のリシャール・ガスケ(22)に1-6、2-6の55分で完敗した。しかし、対戦したガスケは錦織の才能を高く評価し、数年後にはライバルになることを明言。6日に発表される最新世界ランキングでも自己最高の81位を更新することは確実になった。鈴木貴男(32)、森田あゆみ(18)らも敗れ日本選手はシングルスから姿を消した。

 日本の天才がフランスの天才に敗れた。錦織にとって久々の完敗だった。3ゲームしか奪えなかったのは07年1月にチリのツアー下部大会予選2回戦で敗れて以来だ。「自分のプレーが思うようにできなかった」。重圧を振り払い戦ってきた18歳が、初めて若さをのぞかせた。

 初めから気持ちが入っていなかった。13歳のころから「すごいやつがいる」と知っていた相手だ。「尊敬しすぎた」と妄想だけがふくらんだ。様子をうかがう間に、ガスケの速い展開にリズムを失った。滑り出しから5ゲームを連続で失い、そのまま押し切られた。

 第2ゲームで、サーブをした瞬間、ラケットが手からすっぽ抜けた。コートにたたきつけられ、あわてて拾い返球。しかし、決められてポイントを失った。「イライラしていた。気持ちを盛り上げようとしたが簡単なミスをしてしまった」。動揺だけが心に残った。

 しかし、これだけ期待を抱かせ、場内を沸かせた日本男子はいなかった。錦織見たさに観客が押し寄せ、この日はこれ以上入ると危険ということで、センターコートは入場規制となった。ガスケは「3年後にはトップ10に入る選手だと確信している」と、完勝にも絶賛した。

 錦織のプロ転向1年目は終わった。日本男子2人目のツアーVに71年ぶりの全米4回戦と、数々の記録を塗り替えた。「4大大会に値するほど、この大会に優勝したい。来年は優勝を目指します」。3日には、次の試合のストックホルムに向け飛び立つ。【吉松忠弘】