<高校ラグビー:桐蔭学園33-7大阪朝鮮>◇準決勝◇5日◇花園

 桐蔭学園(神奈川)が大阪朝鮮高(大阪第3)に快勝し、4年ぶり2度目の決勝進出を決めた。県大会からトライゲッターとして注目されていた、南アフリカ人の父を持つFB松島幸太朗(2年)が、今大会初トライを挙げるなどようやく本領発揮した。7日の決勝は、2年前の準決勝で敗れている東福岡(福岡)と対戦。関東勢としては97年度の国学院久我山(東京)以来12年ぶり、同校としては初めての優勝を目指す。

 桐蔭学園が4点リードで迎えた前半24分だった。22メートルライン右中間のラックからSH辰野、SO小倉とボールをつなぎ、最後はFB松島が50メートル6秒2の俊足で約30メートルを独走。大阪朝鮮高のタックルも追いつけず、そのままゴールラインを駆け抜けた。16-7に突き放し、勝利への流れをつくったトライに、藤原監督も「いいところで取ってくれた」とうなった。

 試合後、松島は「ホッとしました」と本音をもらした。今大会はポイントゲッターとして期待されながら、BK陣の中で唯一トライを挙げていなかった。他の選手をいかすことに徹してきたという理由もあるが、「今までもいっぱい走りたかったけどできなくて、今日こそは、と思っていた」。決勝を前にようやくエンジンがかかった。

 グラウンドでひときわ目立つ褐色の肌。松島の父ロドリック・ンゴロさんは、07年のW杯を制したラグビー大国、南アフリカ出身。旅行で訪れた母多恵子さんと南アで知り合い結婚。松島は現地で誕生した。サッカー経験者の父親譲りの高い身体能力と闘争本能で、帰国後はU-17日本代表にも選出された。昨年8月の中国、韓国との代表戦では3試合すべてに先発し、毎試合トライを決めた。

 あと1勝で同校初の全国制覇が実現する。相手は前々回大会の準決勝で敗れている東福岡。今年の夏合宿でも敗れた。7人制日本代表候補のCTB布巻ら個々の圧倒的な力は桐蔭学園を上回る。南アの新聞社で政治経済の記者として働いている父とは、大阪入りしてから連絡を取っていないという松島は「どうせ報告するなら、優勝報告がいい」と、西の横綱へのリベンジを楽しみにしている。【鎌田良美】