ラグビーW杯決勝(2日、日産スタジアム)で3度目の優勝狙う南アフリカ代表が1日、都内で前日会見を行った。同国初の黒人主将となったフランカーのシヤ・コリシ(28)は、改めて、母国にとって重要な一戦になることを強調した。

今大会と同じイングランド代表と対戦して、2度目の優勝を果たした07年大会時には「国が1つになり、大きな変化をもたらした」と振り返った。コリシ主将は、今回もその“再現”を強く願っている。

「大統領も議会で決勝の午後1時には『みんなでジャージーを着てテレビで応援しよう』と呼び掛けてくれた。いろいろな人種がいるのが強みでもあり、それを世界へ見せたい。トロフィーを掲げることが出来たら、国がどんな騒ぎになるか想像つかない」

コリシ主将は、決勝が代表50キャップ目となる。報道陣から父が来日中か問われると、隣のコーチからディズニーランドへ行ってることを明かされた。「実は父が海外に出るのは初めて。ラグビーをしていることで、このような機会をつくってくれて本当にうれしい」と少し照れた表情で感謝の言葉を口にした。

91年6月、同国南部のポートエリザベス郊外にある旧黒人居住区で生まれた。貧しい家庭で祖母に育てられ、一切れのパンと牛乳を飲むのが楽しみで小学校へ通った。父の影響で8歳から競技を始めた。12歳の時にラグビーの名門校に奨学金付きでスカウトされ、旧居住区外の学校へ移った。食事は1日6食、寝る場所も床からベッドへ変わった。プロ選手を夢見て必死に英語も学び、20歳で念願のスーパーラグビー、ストーマーズに入団した。その後は、故郷へ恩返しのために衣服やお金を送る支援を続けている。

同国では、アパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃から25年が経過した今も「緩和」が大きな課題となっている。多言語多人種の(愛称)「スプリングボクス」を率いる28歳の闘将は、スポーツは国民を結びつける力があると考え、決勝を「特別な試合」と位置づける。「チームだけでなく、国にとっても重要な戦いになる。今は本当に気持ちが高ぶっているし、その中で感情をうまくコントロールしたい。明日は、チーム全員で役割をしっかりと全うしたい」と、12年ぶりのW杯制覇へ静かに闘志を燃やした。