<大相撲夏場所>◇13日目◇21日◇東京・両国国技館

 自分の記録に並ばれた瞬間は、東京・新宿区の所用先のテレビで見た。第54代横綱の輪島大士氏(62)は、白鵬のV14をわが事のように喜んだ。「もう、素晴らしい相撲。充実していますね。これからは、トップの優勝回数を目指して頑張ってほしい。大鵬さんに続くつもりでね。彼は20回、30回と優勝する力があります」。

 初めて出会ったのは、白鵬が関脇だった約5年前。朝青龍の優勝パーティーで、旭鷲山(現・モンゴル国会議員)に紹介された。以来、ひんぱんに食事に行き、一緒にゴルフを楽しんだこともある。「白鵬とは親子みたいなもんなんですよ。相撲では『手が合う』と言うように、気が合うんですね」。

 故郷・石川県七尾市で毎年1月、2人でトークショーを開く。今年でもう4回目。白鵬は必ず、入院中の輪島氏の母乙女さん(89)を見舞う。輪島氏は角界を離れているが、白鵬からは「横綱」と呼ばれて慕われる。損得抜きの関係が、そこにある。

 輪島氏は言う。「天下の横綱が、うちのおふくろに見舞いに来る。おふくろが喜んじゃって…。いい男だ。おれは逆に感謝している」。東京・大田区の自宅には、白鵬が紗代子夫人を連れて、あいさつに来たこともある。会っても、相撲の話はほとんどしない。そこは、横綱同士の癒やしの場だ。トレードマークの黄金まわし。白鵬がつけるのを、楽しみにしている。【佐々木一郎】