<東都大学野球・入れ替え戦:中大2-0駒大>◇2回戦◇8日◇神宮

 中大(2部1位)渡辺洋平投手(1年=日大東北)が、ノーヒットノーランの快投で、6季ぶりの1部昇格に逆王手をかけた。駒大(1部6位)打線を2四球のみに抑え、宝刀スライダーを主体に11奪三振、2-0で破った。入れ替え戦の無安打無得点は96年春の東洋大・倉則彦投手以来になる。「完全試合男」元巨人、高橋善正監督(64)の前で、愛弟子が快記録を樹立した。

 渡辺の落差あるスライダーに、クルクルとバットが回った。130キロ台の直球を、緩急で球速以上に速くみせる。2四球のみで迎えた9回、「ここまで来たら狙う」と集中した。敗れれば1部昇格が消える、がけっぷちのマウンド。2死から宝刀スライダーで11個目の三振を奪うと、孝行1年生のもとに、先輩たちがダッシュで駆け寄った。

 高橋監督は「監督は完全試合やってるけどな…」と笑い飛ばし「記録は6回ぐらいから分かってたよ。最後に代えたら(中日)落合になっちゃうからな」とじっと見守った。

 抜群のコントロールを買って、自分と同じ1年春から先発を任せた。リーグ戦ではチームトップの5勝を挙げた。点滴や高酸素カプセルで疲れを癒やした。高橋監督は寮の風呂で顔を合わせる度に、71年の完全試合を含めた東映、巨人での現役時代の経験を伝えた。渡辺は「いつも無駄なフォアボールを出すなよって言われます」。四球は出したがヒットは打たれず期待を超えた。

 高校まで福島県で過ごした。普段は平日開催で来られない両親が初めて上京し、神宮で見守った。「勝てて良かった」。楽天田中のファンで、気迫のこもった投球を理想像とする。巨人中村スカウトは「スライダーがバッターから見たら消える」と絶賛した。

 1年生の快投で、6季ぶりの1部復帰へ逆王手をかけた。高橋監督は「これで先輩もやるだろ。ここまで来たら勝たなきゃバカだよ」と締めた。【前田祐輔】