<神宮大会:早大4-1神奈川大>◇4日目◇16日◇大学の部準決勝◇神宮

 日本ハムから1位指名を受けた早大・斎藤佑樹投手(4年=早実)が、新旧ドラフト1位対決で「アマ3冠」を勝ち取る。神奈川大戦に先発し、5回3安打6奪三振。西武1位の大石達也投手(4年=福岡大大濠)につなぎ、勝ち越しを呼び込んだ。今日17日の決勝では来秋ドラフトの目玉、巨人原監督のおいで最速157キロ右腕の東海大・菅野(すがの)智之投手(3年=東海大相模)と激突。3戦連続の先発も志願し、06年夏の甲子園、07年の全日本大学野球選手権に次ぐ学生野球主要3大会制覇をゲットする。

 北海道を思わせる寒風吹く神宮で、斎藤がVロードに歩みを進めた。グラウンドコートに使い切りカイロを張り付け、ベンチにストーブをたいた。試合開始時で気温11度。5回1失点で、先発の役割を果たした。「大学生の中で一番最後まで、試合ができる。明日、いい形で大学野球を終わりにしたい」とかみしめた。

 同点とされた直後の5回2死三塁、カウント2-0と追い込むと、迷わず3球勝負を狙った。132キロのカットボールを沈め、空を切らせる。最速は145キロ。「(明日は)もちろんいくつもり。決勝は投げたい。言われてなくても、いくつもりです」。69球で降板し、余力は残っている。

 決勝の相手は、来秋ドラフトの目玉、東海大・菅野だ。今夏は大学日本代表のチームメートとして戦った。切れ長の目は、高校時代のライバル、楽天田中似と評判。「新旧ドラ1」対決は、負けられない要素が重なる。「熱くなる投球ができるんじゃないかと思います。3年生はあと1年あるし、最後は負けた方がいいと思うんですよね。もう1年、頑張ろうと思わなくちゃ」と笑わせた。

 甲子園と合わせて「アマ全国3冠」まであと1勝だ。1年時の決勝は6回無失点と好投したが、敗れた。「いいピッチングだったけど、勝てなかった。明日はいいピッチングではなくても勝ちたい」。胴上げ投手への思いも「勝てればいいです」と気に留めない。

 07年1月13日、早大初練習には43社110人の報道陣が集まった。激動の4年間を締める、試合前日の大学最後の練習。ベンチ外の4年生も入ったノックが始まると、雨が降り出した。「涙雨」に、応武監督が目を潤ませ、ファンも胸を熱くした。その中、斎藤は笑顔だった。「今日も投げていて楽しかった。明日も楽しめそう」と惜別の思いを込める。

 4年間1度も練習を休まず、日本中の大学生で最後まで野球ができる。気持ちは夏の甲子園決勝再試合と重なる。「すごく似ています。緊張とか全くない。勝たなくちゃいけないという精神状態じゃない。ここまで来られたことがうれしい」。

 先月中旬、東大に敗れた直後に早実Vメンバー9人で集まった。1度大学野球部に入部したが、志半ばで退部した友人たち。みんなプロ野球選手が夢だった。夜が更け「頑張るのが恩返し。それが野球を続ける使命」と感謝の気持ちを伝えた。大好きだったアマチュア野球はあと1日。晩秋の神宮に、フィナーレを飾る舞台は整った。【前田祐輔】