三つどもえの優勝争いとはいえ、残り試合も少なく、3位にいる巨人が一番不利な立場にいる。その巨人が2位の阪神に連敗。結果以上に連敗の内容が痛かった。

先発を5投手で回し、この試合は山口が中4日で登板。日本では久しぶりの中4日だろうが、前回は81球で降板しているし、経験も豊富な右腕だ。本来、シーズン終盤で間隔を詰めてスパートをかけるのは当たり前だし、そこを批判するつもりはない。しかし巨人の先発投手陣を見てみると、ほとんどの投手が好調といえる状態ではない。そんな状態で間隔を詰めて先発させても、いい結果は出にくいと思っている。

山口は下半身の粘りがなくなっている。前回と前々回の登板でも降板前にはマウンドでつまずき、バランスを崩していた。メジャーで練習不足になっていたのか、単純に疲れからきているのかは分からないが、復帰した頃よりフォームが崩れている。これは山口だけでなく、メルセデスや高橋、戸郷にも言えることで、前日の先発で結果を出した菅野にも共通点があった。

ひと言で説明すると、前の肩の開きが早く、腕が振り遅れている。だからメルセデスや高橋はクロスに投げる真っすぐが“真っスラ”しなくなっている。山口や菅野は真っすぐがとんでもなく抜けたり、シュート回転して甘くなる。山口が打たれた大山への1発はすっぽ抜けないように投げた真っすぐが甘くなり、前日に菅野が糸原に打たれた1発は、内角を狙った真っすぐがシュート回転して甘く入ったものだった。

体が開く原因はそれぞれ違うが、全般的に言えるのは下半身に粘りがなく、上半身が突っ込み気味になるから、しっかりしたトップが作れないまま、上半身を揺するように開かせてしまっている。だから持っているボールが外側を向き、腕が振り遅れてしまう。胸を張った状態から閉じるようにして投げられればいいが、胸を張るタイミングが遅れるから腕が遅れ、開かせていくようにしか投げられなくなっている。

疲れから崩しているなら間隔を空けなければいけないし、フォームを崩しているだけならブルペンで矯正する日を作らなければいけない。もともと力がない投手ならともかく、全投手が復調するとは言わないが、しっかりと調整させれば復調する投手は出てくると思う。

先発が駒不足で苦しいだろうが、勇気を持って「打ち勝たなければいけない試合」を作って立て直さなければいけない。阪神は、前日の試合で休ませたスアレスがセーブを挙げた。巨人は5回2死満塁で糸井を迎え、高梨をリリーフに送らずに痛打を浴びた。ささいな起用法の違いで勝敗は分かれるし、勝負の駆け引きがある。見応えのある優勝争いを期待している。(日刊スポーツ評論家)

巨人対阪神 3回途中交代する巨人山口(右)と大城のバッテリー(撮影・足立雅史)
巨人対阪神 3回途中交代する巨人山口(右)と大城のバッテリー(撮影・足立雅史)