関東第一(東東京)オコエ瑠偉外野手(3年)がスーパーキャッチで甲子園のスタンドを沸かせた。

 1回表2死満塁のピンチ。6番佐藤のセンター左後方への大飛球を背走して好捕した。打った瞬間、誰もが抜けたと思った。抜けていれば間違いなく走者一掃、中京大中京が3点を先制していたはずだ。

 この時、オコエは「定位置より5メートル前」に守っていたという。シングルヒットでの2点目を防ぐためだ。それだけに「打球が上がった瞬間はギリギリかな」と思ったそうだ。それでも捕った。

 スーパーキャッチには50メートル5秒台の足、それともう一つ秘密が隠されていた。

 オコエのグラブだ。試合後の取材でわざわざ自分のグラブを見せながらその秘密を解き明かしてくれた。

 色は黒。指を出す穴の開いたタイプ。秘密はその穴にあった。普通は人さし指を穴から外に出すのだが、オコエのグラブは中指を出すように作られていた。中指を出すことによって「バランスが良くなる」のだそうだ。メーカーに特別注文してつくってもらったこだわりのグラブだという。その特注グラブに硬球より大きいソフトボールを使ってポケットを作り確実に捕球できるようにあしらえた。

 ギリギリのスーパーキャッチは、こうしたオコエのこだわりが生んだとと言っていい。

 守備へのこだわりはまだある。1球1球、オコエは守備位置を変える。捕手の構えを見て右に寄ったり、左に寄ったり。「自分の判断でやっています。僕の動きは打者から見えていると思うんで、錯覚させるためにやっています」。打者はオコエが左に動けば内角(右打者)に来ると思うだろうし、右へ動けば外角に来ると予想するかもしれない。それを逆手にとって1球1球動いているのである。また外野守備で大事なことに、他の野手との連係を挙げた。「声も出しますが甲子園では大歓声で聞こえない。常にレフトやライトとはアイコンタクトをして確認しています」。

 初戦の高岡商戦では三塁打を2本放ち打と足で魅せた。そして今回は守備でチームを救った。

 高校野球100年。オコエの見せたプレーもファンに語り継がれていくに違いない。甲子園の「スーパーキャッチ伝説」として。