今夏に渡辺元智監督(70)が勇退した新生横浜が、“初優勝”を飾った。エース右腕の藤平尚真投手(2年)が10三振を奪い4安打完封。平田徹新監督(32)の下、桐光学園を破り2年ぶり17度目の優勝を決めた。横浜、桐光学園の両校は来春センバツ出場を懸け、31日から始まる秋季関東大会(埼玉)へ出場する。

 東海大相模に敗れた今夏の県大会決勝から68日。渡辺監督が勇退し、新体制となった横浜がいきなり優勝を決めた。この秋、名将から指揮官の座を譲り受けた平田監督は「勝つことができて、ホッとしているという心境が一番です」と緊張から解き放たれ、穏やかな笑みを浮かべた。

 藤平は自信満々に、初回から目いっぱい右腕を振った。2回、先頭で15U(15歳以下)代表時にバッテリーを組んでいた桐光学園・大坪からこの日初めての三振を奪うとスイッチが入った。力のある直球とスライダーのコンビネーションで3者連続三振を奪うと9回まで10三振を積み上げた。「夏はストレートとスライダーで腕の振りが違った。両方ともストレートの振りで投げられるよう練習しました」と、4安打完封劇を振り返った。

 秋の大会前、藤平は平田監督から真新しい帽子を渡された。「目標を書きなさいと言われて、自分の強い思いを書きました」。帽子のツバには迷うことなく「甲子園」と書いた。夏の練習では、変化球でストライクを取れるようにするため、ベースのど真ん中にフォークを、捕手寄りの右角にスライダーを投げ込んだ。8月31日、千葉敬愛との練習試合では完全試合を達成。「自分が引っ張らないといけないと思っています」と胸を張った。

 7月28日に横浜スタジアムで泣きじゃくっていたあの日の姿は、もうない。「すべてを出し切って勝つことにこだわりたい。そしてセンバツを決めたいです」。スケールアップした藤平とともに、新生横浜が来春センバツ出場を目指して突き進む。【和田美保】