札幌第一が今夏の南大会準優勝の北照を下し、4年ぶりに4強に進出した。1点差に迫られた6回に攻守の要、銭目(ぜにめ)悠之介捕手(2年)が負傷退場。急きょ公式戦初マスクをかぶった兼村京佑捕手(2年)が、エース上出拓真(2年)を好リードで支え、秋3戦全敗中だった天敵を撃破した。

 激しいクロスプレーに、球場中が凍り付いた。5-1で迎えた6回、札幌第一の守り。2死一、二塁から失策で1点を返され、なお二、三塁。ゴロを処理した三塁手が一塁へ悪送球した間に、2人の走者が一気にホームを狙った。本塁付近で、正捕手の銭目が二塁走者と交錯する。衝撃で脳振とうを起こした銭目は、その場であおむけに倒れ込んだ。

 ぴくりとも動かない背番号2の姿に、マウンドのエース上出は「目が開いてなくて、心配だった」。旭川市内の病院へ救急搬送された銭目に代わって、急きょ、背番号12の兼村が公式戦初マスクをかぶった。4点あったリードは、いつの間にか1点になっていた。

 その兼村は「心の準備はなかったけど、やるしかないと思った」。銭目とは中学時代からのチームメート。当時、正捕手だった兼村は、銭目の途中加入で外野手へ転向した。友の不在を、何としても埋めたかった。「ショートバウンドの変化球を、絶対に後ろへそらさない」という兼村の気迫が乗り移ったように、上出も「あいつがいないから負けたと、言われたくなかった。余計に気合が入った」とギアを全開にした。捕手が交代した6回途中以降、7奪三振で無失点。意図的に三振を狙った兼村のリードに、エースが応えた。

 秋の全道大会で3連敗中だった難敵を、チーム力で退けた。OBの菊池雄人監督(43)は「勝ち上がるために、超えなければいけない相手。OBとして、うれしい」。秋は初の全道制覇へ、チームの絆が一層、強くなった。【中島宙恵】