今春のセンバツ高校野球で注目を集めた新基準の低反発「飛ばないバット」が、新潟でも春季県大会で初導入される。新潟明訓高時代に通算8度甲子園に導き、現在は夏の県大会でも試合解説を務める新潟医療福祉大男女硬式野球部総監督の佐藤和也氏(67)に、同大会の展望、そして新バットが与える影響などを聞いた。【聞き手=大島享也】

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-新基準バットの印象

佐藤氏 データ以上に飛んでいないように見える。もっと飛ぶはずだけど、それよりも飛んでいない。「飛ばない」と思って使っている、心理的なことが影響しているのでは。

-飛ばないという固定概念がある

佐藤氏 本来なら振り抜けていたものが、無理に飛ばそうとして力む。そして飛ばないからどうするか、というと「ゴロを打て」となってしまう。それが、今までの自分たちのイメージと違ったことを求められている感覚になっている印象が見られる。

-どう対応していくことが大事に

佐藤氏 まずは道具とは何か、ということを理解する。使う人がその道具を信頼していなかったら、それは道具ではない。信頼関係があって初めて力がうまく抜けて、道具を頼りにできる。道具がいろいろやってくれるのではなくて、道具を「使いこなす」ことが大事。

-チームの戦い方なども変わってくる

佐藤氏 よりきめ細やかな野球が大事になってくる。特に守り。内野ゴロは増えるので、内野の守備力は今大会で問われると思う。当然、バントに対する守備とか、投手の守備力も上げなくてはいけない。「2、3個のミスが出てもいいや」という野球は許されない。いろんなことに対応出来る準備をしてきたチームが勝ち上がってくるだろうと思っている。

-選手、指導者に伝えたいこと

佐藤氏 「飛ばなくなった」という表現や捉え方をやめよう、ということは伝えたい。本来、ベースボールは木製バットで行うもの。今回は、その木製につながるものに近づいた。ゆえに、木製バットになっても変わらない技術とか、体作りとか、そういうことを考えられるチャンスだと思って、新基準バットをフルに生かした打撃をしてほしい。

◆新基準バット 「打球による負傷事故(特に投手)の防止」と「投手の負担軽減によるケガ防止」などが目的で、これまでより低反発化された。バットの太さは最大径は67ミリから64ミリと細くなり、打球を捉える打球部の肉厚は従来の約3ミリから4ミリ以上に設定。バットがへこむことで強い反発力を生み出す「トランポリン効果」が減衰し、打球の初速が3・6%落ちることが実証されている。導入された今春のセンバツでは大会本塁打が前回の12本から3本に減少した。