これが秀岳館(熊本)の「火の国打線」だ。打撃好調の5番天本昂佑(こうすけ)外野手(3年)の3ランなど、3本塁打を含む2戦連続2ケタ安打の18安打16点で圧倒。25年間にわたり高校野球解説を務めた鍛治舎巧監督(64)の「データ野球」も功を奏し、初のベスト8進出だ。

 南陽工(山口)の戦意を喪失させたのは2本目のアーチだった。5回2死一、三塁。低め直球を左中間に運んだ5番天本は、通算14本目で一塁を蹴り右手でガッツポーズ。「打球が上がり過ぎたかなと思ったが、芯でとらえたので行ったと思った」。小4の12月、腎臓がんのため45歳で亡くなった父明典さんにささげる豪快弾だった。高校時代、大分・日田林工で捕手として元阪神投手の源五郎丸洋とバッテリーを組んだ父へ思いを込めた。

 鍛治舎監督が松下電器(現パナソニック)監督時代から得意とする「データ野球」に、天本は「監督からデータから変化球はボールになることが多いので直球を狙えとの指示でした」。攻守により総合力が問われる木更津総合戦へ、指揮官は「先を見る余裕はない。1戦1戦、1球1球集中したい」と気合を込めた。【菊川光一】

 ◆熊本県勢の本塁打 センバツでは02年千代永(九州学院)が前橋戦で打って以来14年ぶり。県勢のチーム1試合3本塁打は夏の大会で九州学院が87年新発田農戦、98年平塚学園戦で記録しているが春は初めて。