市川越が下克上を遂げた。第98回全国高校野球選手権埼玉大会4回戦で、ノーシードの市川越が、昨秋、今春の埼玉王者の浦和学院を1-0で破った。先発左腕メンディス海(かい)投手(2年)が8回を5安打無失点。打っては2回に三塁打を放ち、虎の子の1点に貢献した。

 下克上の立役者は、スリランカ人の父と日本人の母をもつメンディス投手だ。2年生ながら背番号1を背負い、今夏これまで全3試合に先発。この日は1番から5番まで強力な左打者が続く浦和学院に対し「弱気じゃ勝てないと思ったので、インコースを攻めました」。直球の最速は130キロ台中盤ながら、攻めのピッチングで13個のゴロを打たせた。8回終了後太もも裏をつって降板するまで5安打無失点に抑えた。

 打っても、貴重な1点に貢献した。2回裏、先頭打者で中越えの三塁打を放つと、続く星野大樹内野手(2年)の犠飛で生還した。「とにかく振ろうと思っていました」という思い切りの良いスイングで快音を響かせた。

 先発7人が2年生という若いチーム。「昨夜は寝たり起きたりの繰り返しでした」と言うほど、Aシード相手に緊張はあった。しかし、中祖昂也内野手と石井光内野手の3年生コンビがリラックスさせてくれた。「ピンチになると『メンディー、今日はなんの日だ!?』って、後ろから声が飛んでくるんです。『海の日じゃなくて、海(かい)の日です!』って叫ぶことで、笑顔でいられました」。気楽にやらせてくれる3年生へ、感謝を結果で返した。

 V候補本命を倒す番狂わせに、父エルロイさん(50)も「本当に良かった!」と大喜びだ。「海」という名前の由来は、両親の出会いがモルディブの海だったから。生まれながらのドラマチック男だ。

 一昨年夏の準優勝を見て入学を決めたが、目標はさらに高く「甲子園で勝ちたい」。1度の金星じゃ終わらせない。【杉山理紗】

 ◆メンディス海(かい)1999年(平11)8月11日、埼玉・ふじみ野市生まれ。小学2年から「上野台ファイターズ」で野球を始め、外野手、投手を経験。趣味はスケートボード。家族はスリランカ人の父、日本人の母、姉。170センチ、72キロ。左投げ左打ち。血液型B。