南北海道大会は、春夏連続の甲子園出場を目指す駒大苫小牧が、3-2で札幌白石を下し、初戦を突破した。同点に追いつかれた直後の9回2死三塁で、2番大槻龍城主将(3年)が一塁前に絶妙なバント安打を決め、勝ち越した。

 ひらめいた。同点の9回2死三塁。駒大苫小牧・大槻は、相手選手負傷による6分の中断の間、グラウンドの中にヒントを探した。最初は逆らわずに一、二塁間に打ち返そうと考えていた。「試合が止まっている間、考えなおした。三塁方向は警戒されている。一塁と二塁手は、中断の間のキャッチボールを見たら少し深いかなと」。一、二塁間前方に、ぼんやり浮かび上がったスペースめがけ、思い切って初球からバントを試みた。

 虚をつかれた一塁手の前に転がるボールを見て「あとはとにかくベースだけ見て必死で走った」。一塁へ猛然とヘッドスライディング。起き上がり三塁走者・小出の生還を確認すると、右拳を握って雄たけびをあげた。佐々木孝介監督は(31)「ノーサイン。緊迫した場面で、あの選択はたいしたもの」と驚いた。

 先制を許し、1度逆転しても追いつかれた。センバツ出場校が大苦戦。そんな悪い流れの中でも、動じないチーム力がある。5月の春季全道大会は、打線がつながらず初戦で敗れた。大槻は「春に負けた後、声掛けと(それに対する)返しまでこだわった。そうしないとチームのつながりができないと思った」。細かすぎる指摘に、当初は副主将6人も否定的だったが、仲間で言葉をかけ合うことで、結束は強まっていった。

 茶木圭介部長(40)は「すごくやりあっていたけど、だからこそ本気なのかと、我々は余計な口出しはしませんでした」と振り返る。孤立してでも、自分の考えを信じて実行する。嫌われ役もいとわず意志を貫けるずぶとさが、土壇場での好判断につながった。

 15日に始球式を務めた04年全国初制覇時のメンバー・糸屋義典氏(31)から激励を受けた。大槻は「言葉をもらって気持ちが入った」。伝説の先輩からのゲキを胸に、まず大事な初戦を突破した。真っすぐな心で周囲を巻き込める精神的支柱を軸に、再び、てっぺんを取りに行く。【永野高輔】