第100回全国高校野球選手権記念大会は今日20日、準決勝2試合が甲子園で行われる。34年ぶりの4強進出を果たした金足農(秋田)は19日、練習を行わず休養にあてた。プロ注目の最速150キロ右腕・吉田輝星(こうせい、3年)は大阪・守口市内の宿舎で取材対応した。34年前の先輩たちは桑田真澄氏(50)擁するPL学園に敗れて、決勝進出を逃した。その桑田氏が試合当日のレジェンド始球式に登場する。因縁の相手を前に、大胆な優勝宣言を予告した。

 レジェンドを前に、豪快な優勝宣言だ。吉田は真っさらな聖地のマウンド上での対面を、楽しみにしていた。桑田氏は34年前の先輩たちの決勝進出を阻んだ因縁の相手。一方の吉田は連日の力投と劇的勝利で一躍、今大会の主役に躍り出た。第100回の夏に、新旧の両雄が並び立つ。

 吉田 目の前で見てみたい。桑田さんは優勝している。自分も絶対に優勝します! と言いたい。

 実現させるには、後攻を選択する必要がある。佐々木大夢主将(3年)は秋田大会から、じゃんけんで7勝2敗。今夏は9戦中8試合も後攻で戦ってきた。吉田は「キャプテンはじゃんけんが強くて、いつも後攻を取ってきてくれる」と信頼を寄せた。

 優勝宣言の裏に、手応えがあった。前日18日の近江(滋賀)戦の起床時には左足の股関節を痛めていたが、試合前には痛みが治まり先発を直訴。最速は146キロ止まりでも、140球で完投した。力投から一夜明け「昨日の疲れは残ってない。状態は普通にいい。今日が試合でも投げられる」と万全を強調。入念なストレッチを行い、この日の朝は公園でのジョギングで軽く汗を流した。午後からは温泉に入り、夕食は勝った時の恒例となった焼き肉で決起集会を行った。

 新球で活路を見いだす。吉田はカーブ、カットボールをはじめ8種類の変化球を自在に操るが、近江戦では公式戦で1度も使ったことがなかったフォークを解禁していた。「昨日はスプリットがよくなかった。フォークは相手のタイミングが合ってなくて、手元で落ちた」。夏2度の全国優勝を誇る名門日大三にも動じず「1番から9番まで抜け目がない。緩急を使わないと。基本通り、0点に抑えたい」と宣言した。

 背負ってきたものがある。「秋田県の代表、東北の負けたチームの代表、全国の農業高校の代表として、たくさんの思いを背負って投げてきた。第100回の優勝旗は自分たちが取る」。18日には学校の豚舎で9匹の豚が生まれた。いい知らせが舞い込む中、吉田の右腕が社会現象を過熱させる。【高橋洋平】