<高校野球静岡大会:静岡18-10飛龍>◇23日◇準決勝

 決勝は、強力打線の静岡と絶対的エースを擁す常葉学園菊川が激突する。県最多21度の優勝を誇る名門静岡は、18-10で飛龍に大勝した。前日に22安打で20点を奪った打線は、この日も23安打と2試合連続20安打以上の爆発。5年ぶり優勝に王手をかけた。決勝は25日午後1時、草薙球場で行われる。

 とどまることを知らない静岡打線が、爆発した。22安打18得点。22日の興誠戦続き、2試合連続20安打以上で2ケタ得点を挙げた。4月に就任したばかりの栗林俊輔監督(35)は「自分の常識の枠を超えている。何よりも選手達がなんでだろうって、思ってるんじゃ」と、目を丸くした。

 打線をけん引したのは7打数5安打4打点を挙げた4番・山崎大輝遊撃手(3年)。前日の「考えられない大勝」(山崎)にチームの士気の低下を恐れた「精神的支柱」(栗林監督)は、試合前のミーティングでナインに諭した。「菊川の敵は太陽かもしれないけど、自分たちの敵は油断だけ」。平常心、チームの勝利。「大勝なんか考えなかった」(山崎)結果が、準決勝では06年の浜名(対飛龍)が記録した18得点に並ぶ圧勝を成し遂げた。

 明るい性格と強烈なリーダーシップでナインから絶対の信頼を得る山崎だが「懸けている最後の夏」だから怖さもある。前日の興誠戦で今大会用に神奈川から取り寄せた打撃用手袋が破れた。「初めてフィットした」という手袋。午後6時半、母に相談した。「お願い直して」。御殿場に住む母は「しょうがないなぁ」と思いながらうれしかった。1時間半掛けて、静岡市にある下宿先に駆けつけた。1時間に及んだ補修作業の間、2人きりで話した。「お兄ちゃん(弘樹、25=東海大翔洋出)も決勝で負けちゃって…。お母さんを甲子園に連れて行って」。

 静高野球部に入って良かったと、実感している。いい仲間、いい指導者。でも「母を甲子園連れて行きたい。常葉学園菊川が強いの分かっている」(山崎)が、勝たなきゃいけない理由がある。【鶴智雄】