雄星が“日本一”に向けて始動した。センバツ準V、夏4強の東北初快挙を果たした花巻東(岩手)の155キロ左腕、菊池雄星投手(3年)が8月31日、花巻市内の同校で練習を再開した。9月27日からの新潟国体では優勝を目指すことを宣言。あこがれのプロの世界に備え、自己流のトレーニング方法で残りの高校生活に全力投球する。

 外は台風接近によるあいにくの空模様。それでも、ウエートルームの中は熱気に満ちていた。今春センバツの大会テーマソング「キセキ」など、GReeeeNの曲が大音量で流れる中、菊池は仲間とともに大声を上げながら汗を流した。「現役時代を思い出したりして、新鮮な気持ちになりましたね」。背筋痛により筋力トレーニングや校舎の階段ランニングのみの調整となったが、久しぶりの仲間との練習を充実した表情でスタートさせた。

 8月23日の準決勝で敗れ、25日に岩手に帰ってきた。同日から盛岡市内の実家に戻り、電車で花巻市内の学校に通学している。普通の高校生に戻った菊池だが、新たな目標ができた。出場が決まっている新潟国体だ。

 「やるからには日本一を取りたい。舞台が残されている以上、次のステージに集中したい」。頂点を目指すチャンスを再び与えられた。甲子園で味わった悔しさを、国体という舞台にぶつけることを誓った。

 卒業後の進路はプロ入りが濃厚。今後は佐々木洋監督(34)ら指導者に頼らず、自分で体の管理や練習法を考えることも必要とされる。だが、それも菊池にとっては新鮮なこと。「プロで活躍するには、何が足りないのかを考えないといけない。今までとは違った楽しみがありますね」と笑顔で意に介さない。

 同期たちは大学のセレクションに奔走するなど、個々の道に向けて走りだした。「とにかく国体はみんなと最後の試合になるので、楽しみたいです」と菊池。最後のマウンドで、仲間と最高の思い出をつくる。【由本裕貴】