3月23日開幕の第83回選抜高校野球大会(甲子園)の出場32校を決める選考委員会が28日、大阪市北区で開かれ、21世紀枠で、創立116年目の佐渡(新潟)が外海離島から史上3校目の甲子園出場を決めた。就任5年目の深井浩司監督(48)が、60条からなる「心得」で選手の意識を改革し、新潟市まで片道2時間半という離島のハンディを克服した。同枠の大館鳳鳴(秋田)城南(徳島)とともに春夏通じて初の甲子園に乗り込む。一般選考では前回大会で準優勝し、昨秋の明治神宮大会覇者の日大三(東京)などが選ばれた。組み合わせ抽選会は3月15日に行われる。

 佐渡ナインは気温0・2度、一面銀世界のグラウンドを駆け回った。新潟港から高速船が欠航する悪天候だったが、一報から40分後には校舎から「祝出場!

 ガンバレ

 佐渡高校」の5メートル垂れ幕が下がった。06年に就任し、08年夏と昨秋、県準優勝に導いた深井監督は「佐渡の子供たちに甲子園の土を踏ませてあげられる。そう思ったら、熱いものが込み上げました」と感極まった。

 深井監督が佐渡島の野球を変えた。夏に限れば、それまでの佐渡勢は5校(現在は4校)のべ140回以上の出場で県8強が1回だけ。だが、同監督は「身体能力が高く、意識を変えれば強くなる」と思っていた。柏崎の部長としてセンバツに出場した03年、同じ21世紀枠で外海離島から初出場した隠岐(島根)にも勇気づけられた。「まだ(本土に)近いし、人口も5倍いる。私も指導者でもう一勝負したかった」。長野の名門・丸子実(現丸子修学館)で主将を務めた情熱がうずき、異動時期を迎えて佐渡行きを希望した。

 求めたのは技術ではなく、意識の変革。島特有の妥協と甘えを一掃するため、第1条「チームワークと人間形成の大切さ」から第60条「ピンチとチャンスに強い人間になれ」まで精神修養を説いた。「困難」を言い訳にはしない。対戦相手を求めて、練習試合は例外なく「遠征」。土曜の午前5時に港に集合し、日曜の午後10時に帰る。昨年は島外で40試合以上をこなした。

 エース鎌田侑樹(2年)も「佐渡で生まれて佐渡で育ち、この環境が当たり前」と頼もしい。島内の野球熱も盛んになり昨年、初めて少年硬式チーム(佐渡リトル)が誕生した。深井監督は「本当の意味での困難克服とは、甲子園で勝ってくること」と満足していなかった。【中島正好】