<高校野球秋季静岡大会:静岡商3-1富士市立>◇決勝◇1日

 秋の頂上決戦は静岡商が富士市立を3-1で下し、2年ぶり12度目の優勝を飾った。1回から「出て、送って、かえす」攻撃で先制すると、3回にも犠打と犠飛で追加点を奪った。投げてはエース中本聖エリヤ(2年)が1失点完投で締めくくった。上位3校を公立校が占めるのは12年ぶりで、22日開幕の東海大会(岐阜)にコマを進める。

 好機を前に力を込めると、痛みが走った。6回裏、先頭で出塁した山田直(2年)が犠打で進塁。1死二塁で打席に入った中沢は、左手首を負傷していた。「素振りするとズキッと痛かった。打席に入れば痛みは忘れるけど、長引くとよくないから一振りで仕留めたかった」。痛み止め薬をのんで臨んだ一戦。3球目を体が泳がされながらも引っ張ると、秋風に乗って右翼スタンドに飛び込んだ。

 準々決勝常葉学園菊川戦(9月23日)の守備で前に飛び込んだ際、グラブごと左手首をひねっていた。骨に異常はなかったものの、左打者の中沢にとって左手は、バットに力を伝える生命線。翌日の富士市立戦では内野安打1本に抑えられチームも敗れた。今大会2度目となる敗戦のショックも「流れを変える1発を打つ練習をしたかった」と、シート打撃では1点ビハインドでの2死二塁を想定。ほぼ練習通りの場面での逆転2ランに、痛みのない右手を力強く突き上げた。

 準決勝後、中沢を体育教官室に呼び出し、げきを飛ばしたという栗林俊輔監督(39)も「あそこで打てるのは大したもの。監督賞をあげようかな」と活躍を喜んだ。東海大会まで3週間。痛みを癒やして、岐阜に乗り込む。