「ビッグ3」直接対決へ、新兵器を披露した。第84回選抜高校野球(甲子園)に出場する花巻東(岩手)の大谷翔平投手(3年)が新球フォークに手応えをつかんだ。16日、京都・亀岡市内で行われた龍谷大平安(京都)との練習試合に登板。昨年7月に左座骨を骨折して以来、最長となる6回を投げて無失点。最速146キロながら1安打10三振のうち6三振を、速度の違う2種類のフォークで奪った。大会初日(21日)の大阪桐蔭・藤浪晋太郎投手(3年)との投げ合いに向け、頼もしい仕上がりだ。

 藤浪との対戦決定から一夜明け「みちのくのダルビッシュ」こと大谷が、さらなる進化を見せた。昨夏甲子園出場の龍谷大平安を相手に、新球フォークがさえる。この日最速の146キロ直球を見せ球に、193センチの高角度から縦に変化を加え、三振の山を築いた。先発で負傷後最長となる6イニングを投げ、3回2死からの6者連続を含む10三振。うち6三振を、試投したフォークで奪った。

 ビッグ3決戦を制すための頼もしい新兵器だ。大阪桐蔭との対戦が決まり、自己最速151キロの右腕も「桐蔭さん相手に直球だけでは厳しい」と冷静に分析。そこで試したのは「速く小さく落ちてカウントも取れる球、三振を狙って大きく落とす球」という2種のフォークだった。129キロをはじめ120キロ台と119キロ以下の110キロ台。79球のうち約4割を占めたが「低めにいった球は、いい感じだったと思う」と納得の表情だった。

 試すきっかけは身近にあった。昨年12月、同期の佐々木毅投手(3年)に握りを教わった。2月の静岡合宿で味方打線に試したところ、好感触だった。米ドジャースのホワイトGM補佐が電撃視察した9日の東洋大姫路(兵庫)戦で試す予定だったが、雨で見送り。やっと試すことができ、今秋のドラフト候補を封じた。高校通算35本塁打で「銀仁朗2世」と呼ばれる龍谷大平安・高橋大樹捕手(3年)をフォークで空振りさせ、最後は直球で空振り三振。中学時代、AA世界野球選手権の日本代表で藤浪とバッテリーを組んでいた強打者に「エグイ球だった…。ビックリしました。大谷君の方が藤浪より柔らかい」と言わしめるほどだった。

 新球だけではなく、この日は最速146キロの直球と最も遅い97キロのスローカーブも投げた。最大球速差は49キロだが「6~7割の力でした」。許した安打が遊撃への内野安打だけで三塁を踏ませず、力を入れる得点圏に走者を背負わなかったためだ。自己最速151キロの男が全力を解禁した時、さらなる高低と緩急差が相手打線を襲うことになる。

 8日に対外試合が解禁されてから、4試合で計17イニング無失点。この試合から昨夏の甲子園以来となる背番号1をつけたが「まだ三塁に走者を置いた状況を試せていない」と苦笑いした。ぜいたくな誤算が、順調な仕上がりを物語っている。【木下淳】

 ◆フォークボールの投げ分け

 横浜、マリナーズで活躍した佐々木は、4種類のフォークがある。真下に落ちるフォークは落差の大きいものと小さいものがあり、あとはスライダー回転、シュート回転で両サイドに曲がりながら落ちるフォーク。握りの深さや、縫い目にかける指をかえて投げた。レンジャーズの上原もスライダー系、シュート系と投げ分けている。