<高校野球福岡大会:福岡大大濠7-4東福岡>◇25日◇準々決勝◇北九州市民球場

 あまりにもあっけない夏の終わりだった。プロ注目の左腕、東福岡の森雄大投手(3年)の最後の夏が終わった。準々決勝・福岡大大濠戦に先発し、まさかの5失点。立ち上がりから制球が定まらず1回は2四球と2安打で2失点した。2回も一塁への悪送球などで無死満塁とし、守備に回ることもなく、ベンチへ下がった。

 実は1回途中で左手中指にできたマメがつぶれた。それでも140キロ台の直球で押しまくった。中指の皮がむけていた状態で、この日の最速は148キロ。「自分が投げなきゃいけなかった。抑えられなくて情けないです」。マウンドを降りた後は志願して一塁コーチとしてナインを鼓舞。「絶対に逆転してくれると信じていました」。ゲームセットの瞬間、涙があふれた。

 中学時代、花巻東の菊池(西武)が甲子園で投げる姿を夢中で見た。自分もあのマウンドに立ちたかったが、夢はかなわなかった。「まだ終わった気がしません。明日も試合があるような気がして…」と進路について明言しなかった。プロのスカウトが上位候補としてリストアップする逸材。プロ志望は揺るがない。森の高校野球は幕を閉じたが、この経験を糧にして次のステージで大きく羽ばたく。【前田泰子】