<高校野球福岡大会>◇19日◇5回戦

 福岡県内屈指の進学校、修猷館がプロ注目左腕、川原弘之(3年)を擁すシード校の福岡大大濠を4-2で撃破し、20年ぶりの8強入りを果たした。学業優先で短い練習時間しかないが、そのハンディを得意の“集中力”で補い、好投手を見事に攻略した。過去には57年夏の県大会で準V(27、30年には北九州大会で準V)した「古豪」が、甲子園目指し快進撃を続けている。沖縄大会では決勝が行われ、興南が全国一番乗りで甲子園出場を決めた。神奈川大会では「ハマのゴジラ」横浜の筒香嘉智内野手(3年)が、推定130メートルと特大の高校通算68号を放った。

 福岡県有数の「頭脳派軍団」がシード校相手に思い切り暴れた。学業優先のため練習時間は短いが、そんな“逆境”も関係なし。鍛えられた集中力で「大会NO・1左腕」を攻略した。

 同校の衞藤震治監督(61)が「1回言ったら十分。集中力がすごい」と話す。野球部員のほとんどが国公立大志望で、中には東大や京大志望の選手もいる。練習時間は長くて2時間半で、授業が7限目まである火・木曜日は約1時間しかできない。しかも、狭いグラウンドでラグビー部とサッカー部に場所を奪われ、思い切った練習ができない。そんな状況下で、勝ちにこだわった練習を積んできた成果が出た。

 福岡大大濠には、昨年9月の練習試合で2度戦い、ダブルスコアで大敗していたことから、この日の川原対策も徹底していた。衞藤監督の「低めには手を出すな」「追い込まれる前に打て」「バットは短く」などの複数の指示を練習で体に染みこませ、確実に実践してみせた。

 1点をリードした5回、九大が第一志望の金子和弘(2年)が2死一、三塁のチャンスで左中間を破る2点適時打を放つなど、長短打3本をからめ、一挙3点を奪い突き放した。右手首の骨折から6月に復帰し、ようやく夏の大会に間に合った金子は「ストレート1本狙いでした。勝利に貢献できて良かった」と白い歯を見せて笑った。

 この日は、生徒約800人が駆けつけ、卒業生や部員の保護者で三塁側スタンドは埋め尽くされた。熱の入った応援にも勇気づけられた。「修猷魂」とプリントされたTシャツを着て応援した中嶋利昭館長(58)は「今日はありとあらゆる願いを込めて来ました。期待以上の頑張りでとてもうれしい」と声を弾ませた。【菊川光一】