<高校野球宮城大会大会>◇29日◇準決勝

 2年連続の頂上決戦だ!4年ぶりの甲子園を目指す東北は、センバツ4強の利府を3-1で退け2年連続37度目の決勝。エース佐藤朔弥(3年)が今大会初の9回完投し、2回にはV弾となるソロ本塁打を放った。

 ポーカーフェースの佐藤が勝利の瞬間、珍しくガッツポーズした。春夏合わせ甲子園出場38度を誇る東北のエースでもがむしゃらに利府を研究した。「センバツからビデオを何度も見た」。全国4強を倒し感情を隠しきれなかった。

 圧巻の投球だった。「利府はどんどん振ってくる」。落ちる変化球を駆使し10奪三振と研究の成果を披露。暴投で1失点したが、自責はいまだ0点で防御率0・00だ。我妻敏監督(27)も「完ぺきに近い」と絶賛した。バットでは2回1死、左翼席へV弾を放ち「左投手からは右打者が打たないと」と内角高めをフルスイングした。

 天候も味方した。佐藤は3月の遠征で大雨の中、飛龍(静岡)と対戦。8-0で完封し「雨はイメージが良い」と話す。4回終了時、降雨中断した際には我妻監督自ら佐藤のストレッチを手伝い「コーチ時代を思い出しました」と約10分間、エースの体をケアした。

 昨夏決勝、仙台育英に0-1で敗れた時の左腕エース萩野裕輔(東北福祉大1年)がこの日、早朝6時に東北グラウンドを訪れた。利府・左腕エース塚本対策のため、萩野自らバッティング投手を務めた。我妻監督は「卒業生の励ましが1番」と感謝していた。

 中学時代、東北選抜でチームメートだった利府・遠藤主将との対戦が実現。「本当にいいバッター。やれて良かった。本当は一緒のチームでやりたかったんですけどね」と思い出に浸った佐藤だが、すぐに宿敵との決勝に頭を切りかえ「力のすべてを出す」と宣言。萩野の借り、4年ぶりの甲子園、佐藤の右腕ですべてを取り戻す。【三須一紀】