<高校野球静岡大会>◇30日◇準決勝

 常葉学園橘が第3シード静清工に7-6で延長11回サヨナラ勝ちし、10年ぶり2度目の決勝に進んだ。エース庄司隼人(3年)が延長10回に最速146キロを記録するなど要所で踏ん張り、稲角航平遊撃手(2年)のサヨナラ打を呼び込んだ。

 「リミッター」を外した庄司は、ケタ違いだった。9回裏の2死満塁を逃して嫌な雰囲気で迎えた延長10回表。何かが変わった。「次のことを考えず、力の最大限をボールに伝えた」。先頭の2球目以降はすべて直球勝負で2連続三振。そして、田中の初球に放った145球目は、この日最速の146キロだった。プロでもまれな延長突入後のMAXで空気を一変させ、最後も145キロで空振り。14奪三振目で流れを強引に戻して、サヨナラにつなげた。

 黒沢学監督(32)は「隼人の粘りが試合をつくってくれた」とたたえた。134球の前日掛川西戦に続く連投で、序盤はスライダーが高めに浮いて3失点。12安打も打たれた。だが、直球主体に切り替えた4回に前日も見せた3連続三振。掛西戦同様その裏に打者11人の猛攻を呼んだ。そして10回表。「延長に入ってから投げている感じがなかった」と言うも、下半身からの力のつながりを意識した投法が、最後まで球威が落ちない粘りにつながった。

 3番打者の役割も果たした。11回裏の先頭打席では「狙えと言われて本塁打を狙った」と強引に振り抜きこの日4安打目。稲角の中前打でよれよれになりながら最後のホームを踏んだ。「庄司さんの強い気持ちが伝わった。早く休ませてあげたかった」という稲角に、庄司は「しっかり打ってくれた」と感謝した。

 最後の夏。超激戦区を勝ち抜き、やっと決勝まで駆け上がった。今大会、投じた球数は703球に上る。「野球が本当に楽しい。仲間に気持ちよく投げさせてもらっています。最後も校歌を歌いたい」。願いは、ただ1つしかない。【今村健人】