3拍子そろった右の強打者、それがPL学園(大阪)・吉川大幾内野手(3年)だ。吉川は阪神、中日、オリックスなど複数球団がドラフト上位候補に挙げる万能野手だ。50メートル5秒9の俊足で、打っては1番と3番、守っては昨秋から取り組んだ遊撃と中堅を兼任する。

 高校通算23本と、吉川の本塁打の数は多くはない。だが1本ごとに、鮮烈な印象を残して来た。昨夏の大阪大会決勝、関大北陽戦で先頭打者弾を含む2アーチを放ち、10-0完勝を演出。1大会5本塁打は、大先輩の元オリックス清原和博氏(42=日刊スポーツ評論家)の2年時の4本を上回った。甲子園では3回戦の県岐阜商戦でも中堅に豪快な1発。今では外れ1位の可能性もある高校生野手の目玉に成長した。

 「打撃で気をつけているのは、最短距離でバットが出るようにすること。守備は内野でも外野でもどちらも守れるようにしておきたい。1つの守備位置だけでは将来、チーム内で勝ち抜いていけなくなりますから」。プロを意識した言葉を口にするようになったのは、ごく最近のことだ。

 主将としてチームをまとめる責任感を優先してきた。どうすればチーム全員が同じ方向を目指せるのか、そればかり考えてきた。昨秋の近畿大会初戦で福知山成美(京都)に惜敗。3季連続甲子園出場が絶望となった試合後、皇子山球場外で鬼気迫る顔で周囲のゴミを拾い集めた。「普段の生活からきちんとしなければ夢など果たせない」という試合直後のセリフをすぐに実行した。年が明け、スカウトが視察に訪れても「今の自分はPLの一員。1日でも長くここで野球を続けることしか考えていない」と主将に徹して来た。

 高校最後の夏は相手や状況次第で打順は1番と3番、守備位置は遊撃と中堅を兼任。才能のすべてで2季ぶりの甲子園をつかむ。【堀まどか】