来季からナ・リーグでも「DH」が採用される? 

 2016年初のオーナー会議で、MLBコミッショナーのロブ・マンフレッド氏が、DH制の変革について前向きな姿勢を見せました。「リーグ統一(機構として)の最大の遺物は、DH制があるか、ないかだ。これは重大な問題だと思う」。

 1973年、ア・リーグがDH制を採用した際、ナ・リーグは賛同せず、これまでの伝統を重要視し、投手が打席に立つスタイルを変えることなく、ア・リーグとは一線を画してきました。その後、ワールドシリーズやインターリーグ(交流戦)では、ホームチームの所属リーグの方式に添う形で、試合運営を進めてきました。

 その一方で、2013年にアストロズがア・リーグへ移り、両リーグが15球団ずつになったことに伴い、開幕から最終戦まで常に交流戦が行われるようになりました。その不規則な日程の影響もあり、投手が攻撃の際に故障するケースが増えたと指摘する声があるのですが、機構側の本当の狙いは別にあるとも言われています。長年のステロイド渦が一掃されたことで、過去数年は各チームの攻撃力が低下。特に、ナ・リーグの得点力不足がファン離れを招いているとの見方もあり、本塁打などの打撃戦に活路を求める思惑があるとも見られています。

 ナ・リーグのDH導入について、現時点でオーナー側の意見は賛否両論に分かれているようです。MLB副会長のジョー・トーリ氏も「その話はしていない」と、慎重な態度を見せています。もっとも、選手会側が導入に積極的と言われており、現行の労使協定が契約切れとなる今オフに、折衝が本格化することは間違いなさそうです。

 ナ・リーグには、投手の打席を考慮した戦術が定着しているだけでなく、昨季、打率2割4分7厘、5本塁打を放ったバムガーナーのような「強打の投手」も少なくありません。今季、ドジャース入りする前田健太も打撃を得意としています。さらに、近い将来、メジャー移籍の可能性がある二刀流の日本ハム大谷の動向にも影響を与えかねない問題です。

 野球黎明(れいめい)期からの9人野球か、得点力が増すDH制か-。

 今季は、シーズンを通して、各方面で論議が続きそうな気配です。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)