ひと足早く開幕した日本球界をよそに、メジャーの各球団も4月3日(日本時間4日)の開幕へ向け、着々と準備を進めています。マエケンこと前田健太投手が所属するドジャースは、デーブ・ロバーツ新監督のもと、細かい走塁練習を加えただけでなく、連日、投手陣の打撃練習にも時間を割いています。

 そんな中、とりわけ熱心なのが、特別アドバイザーとして指導にあたっているグレッグ・マダックス氏(49)です。現役時代、通算355勝を挙げ、サイ・ヤング賞を4回獲得し、14年に野球殿堂入りした名投手は、ゴールドグラブ賞18回の「名手」としてだけでなく、好打者としても知られていました。現役としてメジャー23年間、DH制のないナ・リーグひと筋でプレーしてきた同氏にとって、「投げて、打って、守る」ことは、野球選手として当然のことだったわけです。投手相手の打撃投手を務める同氏は、1球ごとに「バスターだ」「右打ちだ」と指示するだけでなく、カーブやツーシームなど、現役時代をほうふつさせる変化球も交えつつ、投手陣の打撃を鍛えています。

 メジャーに比べると、全体として練習量の多い日本ですら、投手の打撃練習は毎日ではなく、バント練習を含め「3日に1回」など限られています。その一方で、キャンプ中、ほぼ毎日「特打」を繰り返すドジャースの打撃練習メニューについて聞くと、マダックス氏からは「そんなことは当たり前だろう? 日本では毎日やらないのかい?」との答えが返ってきました。それほど、投手の打撃を重要な戦力として考慮しているのかもしれません。打撃好きとしても知られる前田は、「振りすぎで疲れます」と言いつつも、同僚とワイワイ雑談しながら「本塁打競争」などで楽しんでいます。

 その結果、サク越えの多い前田が愛用する「ミズノ社」のバットが注目を集め、好打者と同等に近い性能の高さに「異論」が出始めました。ベテラン左腕のカズミアーにいたっては、「日本製のバットはすばらしい。硬いけど軽い。あのバットは(身内の本塁打競争では)不公平だよ。ただ、我々にはケンタのバットが必要だな」と、前田に対してバットの供給を要求。前田自身も「みんなにバットをくれ、と言われてヤバいですね」とこぼすほど、投手の打撃への関心度が高まっています。

 マダックス氏のように、「投攻守」の3拍子そろった投手がズラリと並べば、投手が「9番目の野手」として攻撃にも参加できるはずです。本職の投手としてだけでなく、打者としても能力の高い前田が、打席でも勝利に力を発揮できれば、ド軍の世界一への距離は自然と縮まるはずです。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)