18日からテキサス州ダラスで始まったMLBオーナー会議。今回重要な議題として防球ネットの設置拡大が話し合われる予定だ。

 アメリカの球場は日本に比べてフィールドとスタンドの間に防球ネットが少なく、それが臨場感を高める要素になっている、とされてきた。実際、テレビ中継が発達した現在、来場したファンが一体感をより感じられるようにする、ファン・エキスペリエンスの向上は集客増のための重要な施策と捉えられている。が、一見それに逆行するような議論が起こっているのだ。

 原因はファンが巻き込まれる事故が急増したことである。今シーズン、ファウルボールが直撃して、ファンが負傷する事故が相次いだ。6月にはレッドソックスの本拠地フェンウェイパークでの一戦で折れたバットが女性ファンの頭部を直撃、一時は生命を脅かすほどの重傷を負う事故も起こっている。同じフェンウェイパークでは8月にもスイング時にバットが選手の手を離れ、女性ファンの腕に当たる事故もあった。

 さらにMLBの球場で防球ネットを拡充すべきとする集団訴訟をアスレチックスのシーズンチケット保有者が7月にカリフォルニアで起こしている。

 こうした事態を受け、MLBとしても緊急対策を打つべきか検討に入ったというわけだ。先週開催されたロブ・マンフレッドMLBコミッショナーはこの議題が真剣に討議されることを望むとしながらも「スタジアム・デザインの多様さから端から端までネットをかけることが困難なのは明白だ。かなり複雑になるだろう」とこの対策の難しさを語っている。

 MLBの球場にはフェンウェイパークやリグリーフィールドのように100年以上前に建設されたところもあれば、3年前にできたばかりのマーリンズパークのような最新スタジアムもある。形状もバラバラで一様な基準を当てはめにくいのも事実だ。

 アスレチックスのリュー・ウォルフ・オーナーは「もちろんファンの安全が第一だ。しかしファン・エキスペリエンスが下がるのも望ましくない。どこかでバランスがとれることを望んでいる」とコメントしている。

 会議では防球ネット設置拡大についてMLBの最高法務責任者からオーナー達に対してプレゼンテーションが行われ、そこから討議が行われるということだ。果たしてどんな結論が出るのか注目したい。