1巡指名でくじ引きが行われる日本のプロ野球と違い、MLBのドラフトは最初から成績の悪かったチームから指名が行われるウエーバー方式がとられている。そのため不調のチームが上位のドラフト指名権を得ようとわざと負けが込むように仕掛けているのではないかという声がこれまで何度も上がっていた。

 もちろんMLBや各チームはこの懸念を否定してきたが、先月フロリダ州コーラルゲーブルズで開催されたオーナー会議でこの件が議論された模様だ。スポーツ専門局ESPNの電子版が匿名の関係者からの証言として、現地2日に伝えている。

 記事によれば議論は正式な手順を踏んだ公式の議題ではなかったようだ。ただいくつかのチームがこの仕掛けについて懸念を表明したということである。さらに議論されたもう一つの目的として、こうしたことが行われているかもしれないということを知らないオーナーがおり、そうしたオーナーに問題意識を持ってもらうためだったのだとか。

 ただしこれでわざと主力選手を出場させないといった行為に対する規制に向かうかといえばそうはならないと記事は指摘している。選手会と結ばれた労使協定の改定が必要になるのだ。現在の労使協定は12月で失効するため、次の労使協定交渉でこの件を盛り込むには良い時期ともいえるのだが。

 そして記事はこの行為が疑われた例としてアストロズを挙げている。2011年から2013年まで3年連続でアストロズは106敗以上し、そのおかげで3年連続1位指名権を得た。さらに大型契約を結びやすくする権利まで獲得していたのである。こうした好条件でのチームづくりもあって昨シーズン、アストロズはプレーオフに進出できたというのである。

 いずれにせよ正式な議題ではなかったとしてもオーナー会議でこの懸念が取り上げられたということはそれだけ深刻な問題とMLB全体が考えているということは確かだ。