金字塔へのカウントダウンが一気に熱を帯びてきた。マーリンズのイチロー外野手(42)が17日(日本時間18日)、セントルイスでのカージナルス戦に「1番中堅」で10試合ぶりに先発出場。4打数3安打、1得点1盗塁の大活躍で勝利に貢献し、メジャー通算3000安打まであと「6」とした。3回の遊ゴロでは快足も披露した大リーグ最年長野手は「(一塁への到達スピードは)たぶん5年前と比べても速い」と話して周囲を驚かせた。

 イチローが悪条件の下で6月13日以来、今季5度目の3安打以上をマークした。試合開始の約2時間前に先発を知らされ、ナイター翌日で気温が30度台半ばの猛暑のデーゲーム。今月2日以来の先発出場にもかかわらず、ヒット以外にも四球で攻撃の突破口を開き、三盗も決めた。

 ただ、今季の充実ぶりが凝縮されたプレーは、唯一出塁できなかった3回の遊ゴロだった。リプレー映像でアウトに覆ったが、42歳らしからぬ速さで一塁を駆け抜けた。今なお3秒台を維持する一塁までの到達スピードについて問われたメジャー最年長野手は、こう言って首をかしげた。

 イチロー 去年というか、たぶん5年前と比べても速いと思いますね。少なくともヤンキースにいた頃よりも速い。何でかと言われれば、よく分からないのですが。

 40代でスピードの進化を実感できるアスリートは、そうはいない。多くの選手が年齢とともに肉体の限界を感じてユニホームを脱いでいく中、イチローの足は衰えるどころか、ますます磨きがかかっている。

 卓越したバットコントロールも健在だ。前日、かつてアスレチックスのエース左腕としてしのぎを削ったマーク・マルダー氏が「とんでもない悪球をしっかり打つ」とイチローとの対戦を振り返った。競い合った者同士ならではの褒め言葉だ。この日の6回、低めの変化球を左翼線に運んだ一打は、それをほうふつとさせた。

 打率は3割4分7厘に上昇。規定打席には届いていないものの、出塁率4割2分3厘は262安打を放った04年を上回る。年を重ねるごとに洗練されていく。球団公式ツイッターは「最上級のワインのようだ」と表現した。大台まであと6本。金字塔を前にした重圧は全く感じられない。生みの苦しみを味わうことなく、節目を通過しそうな気配さえ漂っている。