ヤンキース田中将大投手(27)が、マリナーズ岩隈久志投手(35)との投げ合いを制し、11勝目を挙げた。楽天時代のチームメートと、今年4月以来2度目の対戦。田中は7回を無失点に抑え、自身4連勝とした。今回の登板で、2人とも規定投球回となる162イニングをクリア。

 泥くさかった。中軸にカノ、クルーズが並ぶマ軍打線。1番には青木もいる。5回まで毎回の被安打。田中は「『当たっている』が頭の隅にあった。力みがちで『ちょっとおかしい』と思いながら投げていた」と自分の調子を悟り、「目先を変える」と賭けに出た。

 捕手に首を振り、カーブを多投した。3回まで2球。4回から9球。5回だけで5球。「キャッチャーも感じてくれた」。吉と出た賭けを逆手に、再び力を振り絞った。フィニッシュの2者連続見逃し三振は、左打者の内角、右打者の外角ボールゾーンから食い込む150キロ前後のツーシーム。「相手は変化球を待っている。このタイミングなら。最後はバラバラ」。もがき抜いて突き抜けた。

 田中と岩隈。楽天の金看板がワイルドカードを争って投げ合う。単なる登板じゃなかった。「注目していただき、大きく取り上げてもらえる。ありがたいことなんです」。意外な言葉には大きな背景があった。

 田中 「今の自分」を見てもらいたい気持ちがある。メジャー1年目はたくさん注目をいただいて、徐々に…の現状。いい時もあれば、うまくいかない時もある。結果はもちろん出る。ただ結果だけじゃなく、今の自分のボールだったり、プレーだったり、正直なところを見てもらいたい。

 2回1死二、三塁のピンチ。強い投ゴロを捕球した田中は、飛び出した二塁走者、ベース上の三塁走者を目で制した。その上で一塁でアウト1つを取るという、冷静で現実的な選択をした。「一瞬で、いろんなことが巡りましたね。セカンドに投げていたら併殺を取れていたかも知れない。ベストな選択だったのか。分からないですけど」。なりふり構わず今の田中将大を目いっぱい表現し、先輩との投げ合いを制した。【宮下敬至】

 ▼田中と岩隈が4月17日以来、今季2度目の先発対決。日本人投手の先発対決は前記以来13度目。田中はこれで2戦2勝。日本人先発対決で2勝は、黒田、ダルビッシュに次いで3人目の最多タイ。岩隈は12、13年にダルビッシュ(レンジャーズ)と投げ合い1勝1敗。田中との対決は2敗で、通算1勝3敗となった。