<イチローインタビューその3>

 ピンチをチャンスに変えた今年のイチロー外野手。逆境を乗り越え、次に目指すものは。

 -開幕から8試合欠場というピンチをどう受け止めたのか。

 イチロー

 WBCでは今まで味わったことのない恐怖を味わい、初めての病気を経験して臨むシーズンになった。そしてそのシーズンには(9年連続200安打の)新記録がかかっていた。これまでで一番と言える厳しいシーズンでしたが、それは僕にとって大きなチャンスであると考えていました。

 -チャンスとは。

 イチロー

 一番の逆境を経験できる機会なんてそうはありません。すべてを最も困難な状況に持っていったうえで目標を達成できたら、その経験は大きな武器となりますから。

 -心身に苦しい状況を経験し、さらに耐性が上がったのか。

 イチロー

 胃潰瘍が治って、体の感じるレベルが変わった。例えばマッサージが要るな、と感じるタイミングが明らかにこれまでと違う。ほぼ毎日やっていたものをやらなくても大丈夫という日が続いて、結局2週間に1回くらいというペースになったりもした。

 -9年連続200安打達成後「解放された」と話した。

 イチロー

 人のつくった記録と戦うのは終わり。今の時代に明治時代の人(8年連続200安打で並んでいたウィリー・キーラー)と戦うことはしんどかった。

 -200安打以外の数字に関心が生まれることは。例えば40本塁打は。

 イチロー

 200安打がいったん途切れて、もう1度200本を目指す。そしてそれが成し遂げられて、なら考えてもいい気がしますが、今の時点でそれ(40発)を目指しても面白くない。200本打った上でホームランも40本なら最高ですが…。

 -毎年、オールスター前日の本塁打競争出場を打診されるほど、打球を飛ばす技術は折り紙付き。

 イチロー

 現実的には難しいですけどね。僕のようにヒットにできるゾーンが広い打者には向いていません。

 -では200安打以外の目標は。

 イチロー

 いつかメジャーのマウンドに立つことでしょう。もともと投げることに自信を持っていたからか、今でもキャッチボールの相手がミットを持っていると血が騒ぐんです。(終わり)