復刻・95年6月26日付野茂初完封の横に…
<1995年6月26日付、日刊スポーツ紙面から>
【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)24日(日本時間25日)=寺尾博和】ドジャース野茂英雄投手(26)がサンフランシスコ・ジャイアンツ戦に先発し、毎回の13三振、2安打、3四球でメジャー初完封を達成した。今季ドジャースタジアム最高の5万3551人の前で、5連勝を飾った。オールスター戦(7月11日、テキサス)への出場にも当確ランプがともったばかりか、初の「日米新人王」獲得にもチャンスが広がってきた。チームも4連勝でロッキーズとともに同率首位。メジャーの「トルネード旋風」は吹きやみそうにない。
◇米大リーグ(24日・ロサンゼルス、ドジャースタジアム)
ジャイアンツ 000000000-0
ドジャース 00120040X-7
【ジ】ライター、フック、バーバ、バートン、ベック―マナリング
【ド】野茂-ピアザ
(勝)野茂5勝1敗(敗)ライター3勝5敗
(本)ケリー2号、アシュリー8号(ド)
こん身の力を込めた野茂の130球目のストレート。最後の打者ファニートの打球は力なく、一塁ファウルエリアに上がる。まだ一塁手カロスのミットにおさまっていないのに、三塁側ベンチから、仲間たちがマウンドに向かって走り出していた。
その時、スタンドのファンも全員が立ち上がっていた。足を踏み鳴らし、帽子を振り、両手をたたいて「ノモ」を祝福した。
夢に見たメジャー初完投がシャットアウト。いつもは派手なポーズもないシャイな男も、この夜ばかりは特別。「本当にうれしい。完封は意識していましたから」と右手を上げるパフォーマンスまで披露した。
5月2日に初めてメジャーのマウンドを踏んでから53日目の快挙。野茂には風格すら漂っていた。1回いきなり無死一、二塁のピンチを背負いながらも、全く動揺することもなく、31球という球数を駆使した。2死満塁となりクレイトンをカウント2-1と追い込むと、スタンドから三振をねだる拍手。野茂はそれにこたえるように、フォークを決め三振に仕留めた。ファンと一体となった野茂は、2回から快ペース。ヒットも与えなければ、四球もない。このパーフェクトピッチングは8回まで続いた。
「ピアザに裏をかかれた」。ジャイアンツのベーカー監督が苦々しく振り返ったように、この日の初球は32人中29人に対してストレート勝負。これまでならフォークで慎重に入る投球パターンの裏をかいた。これもメジャーの余裕の表れ。三振は毎回の13個に上った。
「今は負ける気がしない。味方が打って、守ってくれますから。みんなのおかげです」。打線は中盤以降に7点の援護。守っても6回、ボンズの大飛球を中堅手ケリーがファインプレー。この攻守のリズムは野茂と野手との信頼感から誕生したものといえる。
ナ・リーグのトップを走る通算96奪三振、5連勝でオールスター出場に当確ランプがともった。投手枠は11~12人といわれる。ラソーダ監督は「おれは占い師じゃないから分からん」とにべもなかったが、7月2日(日本時間3日)の出場選手決定に向け、29日(同30日)のロッキーズ戦登板が大きなカギとなった。さらに夢は広がり太平洋を挟んでのダブル新人王という偉業もしっかりその目に見えてきた。ライバルはエクスポズの速球派ペレス、ブレーブスの新大砲ジョーンズの二人だ。
ただそんな周囲の喧嘯(けんそう)にも野茂は惑わされない。この夜、試合前に山と積まれた日本からのファンレターに、サインペンを走らせて返事を書いた。「ありがとうございます。応援してください。がんばります」。そこにはファンを大切にする「メジャーリーガー・ノモ」の姿があった。
1 2 3 4 5 6 7 8 9
(中)ルイス 右安……左飛…………二飛…………右安
(三)スカーソン 四球……三振…………三振…………右直
(左)ボンズ 三飛……三振…………中飛…………三振
(右)ヒル 三振…………中飛…………三振……四球
(一)カレーオン 四球…………投ゴ…………右飛…………
投 バートン ………………………………………………
投 ベック ………………………………………………
打 ファニート …………………………………………一邪
(遊)クレイトン 三振…………三振…………三振……
(二)パターソン ……三振…………遊直…………二ゴ
(捕)マナリング ……中飛…………三振…………中飛
(投)ライター ……三振………………………………
打 リード ……………………二ゴ………………
投 フック …………………………………………
投 バーバ …………………………………………
一 フィリップス……………………………………三振
---------------------------
勝 敗 S 試合 回数 打者 安 三 四 死 失 自 通算防御
野茂○5 1 0 11 9 32 213 3 0 0 0 2.30
◇盗塁 ルイス(1回)◇暴投 野茂(9回)
★野茂の米大リーグ成績★
―---------------------------------
月 日 相手 勝敗
回数 打者 球数 安打 三振 四死 失点 自責
----------------------------------
5・ 2 ジャイアンツ
5 19 91 1 7 4 0 0
7 ロッキーズ
4・2/3 25 97 9 7 2 7 7
12 カージナルス
4 21 94 0 5 7 3 1
17 パイレーツ
7 26 107 2 14 4 0 0
23 メッツ
6 28 107 8 7 2 4 3
28 エクスポズ ●
6・1/3 30 123 4 9 7 3 3
6・ 2 メッツ 〇
8・0/3 30 123 2 6 4 1 1
7 エクスポズ 〇
8 34 129 6 4 4 1 1
14 パイレーツ 〇
8 33 125 6 16 3 3 2
19 カージナルス〇
8・1/3 32 108 3 8 3 2 1
24 ジャイアンツ〇
9 32 130 2 13 3 0 0
----------------------------------
計 74・1/3 310 1234 43 96 43 24 19
ナ奪三振3傑
----------------
(1)野茂 (ド) 96
(2)スモルツ (ブ) 79
(3)シリング (フ) 76
----------------
ナ防御率3傑
----------------
(1)マダックス(ブ)1.77
(2)バルデス (ド)2.11
(3)野茂 (ド)2.30
―---------------
ナ勝利ランキング
----------------
(1)ニーグル(パイ) 8
(2)ペレス (エ) 7
他4選手
(12)野茂 (ド) 5
他14選手
---------------―
ナ勝率ランキング
---------------―
(1)ペレス (エ).875
(2)ミンブス (フ).857
(5)野茂 (ド).833
---------------―
【注】ド=ドジャース、エ=エクスポズ、フ=フィリーズ、ブ=ブレーブス、パイ=パイレーツ
ナ・リーグ新人王候補
--------------------―
名前 勝 敗 防 振
--------------------―
野茂 (ド) 5 1 2.30 96
ペレス (エ) 7 1 2.30 49
--------------------―
名前 率 本 点
----------------―--
ジョーンズ(ブ) .244 11 41
▼新人王資格 大リーグの新人王は日本同様に全米野球記者協会所属の記者投票で決まり、ア・リーグ、ナ・リーグから一人ずつ選出される。新人王資格は在籍年数や年齢、国籍に関係なくメジャー経験だけ。打者なら130打席未満、投手は50イニング未満の選手でメジャーベンチ入り日数(8月末までを加算日数として45日未満)も条件。ドジャースは92年から3年連続新人王を輩出している。
★ドクター0&K 「ドクター0」として有名なのは、1988年のオーレル・ハーシュハイザー投手(当時ドジャース、現インディアンス)。59回連続無失点の0行進に加えて、名前のアルファベット「O」をもじってこう呼ばれた。「ドクターK」は84年のドワイト・グッデン投手(メッツ)が最初。いずれも医者(投手)と患者(打者)の関係に見立て「ドクター」と言われた。野茂はこの伝説のドクター0、Kを抜くことができるか。
[2008年5月21日9時53分 紙面から]
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