【ニューヨーク24日(日本時間25日)】ヤンキース松井秀喜外野手(34)が、来年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)出場を正式に断念した。今年9月に左ひざの手術をしている松井は、ここまで出場に関する明言を避けていたが「今の体の状態では出られるとは言えません。MLB側には辞退するという趣旨を伝えました」と断念を表明。ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMもこの日、あらためて不参加が球団の決定事項であると明言した。来月15日には日本代表候補45人が発表される予定。「4番DH」の有力候補だったが、リストから外れることが決定的となった。

 苦渋の決断だった。WBC出場か否か注目されていた松井が、この日までに断念する意向を正式に伝えた。出場したくても明言できなかったもどかしさが、まだ腫れの残る左ひざには残っている。「どうしても出たかった。でも、今の体の状態では、出られると明言できません。MLB側には、辞退するという趣旨を告げました」と無念の思いを隠すように、淡々と話すしかなかった。“サムライ・ジャパン”の4番候補が、正式に出場を断念した瞬間でもあった。

 日の丸を背負って戦う重みは、十分に理解している。プロ入りしてから全日本チームのユニホームを着て戦ったことはないが、最大のチャンスは06年の第1回大会だった。しかし本人の意思とは無関係に、出否を巡って周囲は過熱していった。大会の趣旨などがはっきりせず、不透明のまま進み、所属するヤ軍は選手派遣に関し、前向きではなかった。ギリギリまで苦悩した末、辞退を表明したが、当時の王監督をはじめ、多くの関係者に迷惑をかけ、ファンを失望させた事実を重く受け止めていた。日本代表を率いる巨人原監督は「ギリギリまで待つ」という姿勢を貫いているが、その言葉に甘えている立場でないことを理解した上で決断した。

 まだ、走ることもできない状態で、リハビリのメニューは自転車をこぐことや、左ひざの可動域を広げることに重点が置かれている。下半身をフルに使って打つタイプであり、患部が回復しても、実戦の勘は、とても3月中に間に合う状況ではない。仮に間に合ったとして、故障者リスト(DL)に45日以上入っている選手に関しては、球団が拒否できるルールも新設された。自らの意思に関係なく、大会直前まで待っていてくれても出場できない可能性が高い。「これ以上、迷惑はかけられない」という思いが強かった。

 現在の日本代表候補選手は48人がリストアップされている。松井も4番候補として名前を連ねているが、本人が断念したことにより、来月15日に発表されるメンバーからは外れる見込み。置かれている状況から仕方ない結論とはいえ、日の丸を背負ってプレーする勇姿は、また見られないことになった。