<マリナーズ1-6レンジャーズ>◇18日(日本時間19日)◇セーフコフィールド

 【シアトル(米ワシントン州))=四竈衛、木崎英夫通信員】マリナーズ・イチロー外野手(36)が、日米通算3500本安打を達成した。レンジャーズ戦の第1打席に二塁内野安打を放ち、メジャー10年目で通算2222本目。オリックス時代の9年間で放った1278本との合計で、区切りの数字に到達した。第4打席にも投手のグラブをはじく内野安打を放ち、4打数2安打。今季通算193本となり、10年連続200本安打まで残り14試合で7本と迫った。

 物静かな、大記録到達だった。1回の第1打席、初球。イチローが一塁を駆け抜けると、地元ファンから一瞬、歓声が上がった。だが、ほとんどのファンは、区切りの数字に気が付いていなかった。わずかに右翼席最前列に陣取る常連のファンが、ボードの数字を「3500」に変えて祝福したぐらい。一塁ベース上で帽子を掲げることもなく、いつものように試合は再開した。

 イチロー

 ややこしいですからね、僕の場合。日米というのが付いちゃうからちょっと面倒くさいですよね。

 日米3500本を前に、複雑な思いを持っていた。通算で3500本に到達することは事実でも、基本的に米国内で日本の記録が加算されることはない。実際、08年に日米3000本安打を達成した際、米メディアなどから否定的な論調や中傷めいた記事が出るなど、合算記録への解釈は不透明なままだった。だからこそ、今回も記録に近づいた時点で、球団関係者の問い合わせに対し、恒例となっていた電光掲示板での記録達成告知を辞退した。「2年前のことを勉強してますからね。楽しみにしているファンの人もいただろうし、それを奪ってしまったことは残念です。ただ、僕としてはそうしなきゃいけない。本当はそうしたくなかったんですけど…」。

 その一方で、イチローだからこそ、日米合算の認知についての議論が頻出するようになった。米国デビュー当初は、内野安打が多く、長打が少ないとの批判も聞かれた。だが、10年間で他のどの選手よりも多く安打を打ち続けてきたことで、周囲の視線は変わり、日本での1278本の解釈も論議されるようになった。「(試合数の多い)こっちにいた方が数は打てるわけだから、そう考えるとそれなりの意味があるとは思いますけどね」。

 イチローにすれば、合算記録の解釈は周囲に任せ、自らは次の1本を狙いに行くしかない。実際、第4打席でも安打を放ち、200安打まで7本と迫った。「そんなに区切りだと、僕は思ってないですよ」。ダッグアウト内で記念のボールを手にした際、一瞬だけ浮かべたのが、この日唯一の笑顔だった。【四竈衛】