<アスレチックス2-5マリナーズ>◇2日(日本時間3日)◇オークランドコロシアム

 マリナーズのイチロー外野手(37)が、またも記録を塗り替えた。アスレチックス戦で5打数2安打1打点。メジャー通算2248安打とし、エドガー・マルティネスが持つ2247本の球団最多安打記録を塗り替えた。前夜の開幕戦に続くマルチ安打と1盗塁1得点で開幕2連勝に貢献した。

 04年までともにマ軍でプレーをしたマルティネスの球団記録を抜き去ったのは、イチローの貴重な内野安打だった。2-2の同点で迎えた9回1死一、三塁で第5打席が回ってきた。最高のシナリオが用意された状況で真骨頂の内野安打を放つ。カウント2ボール2ストライクから守護神フエンテスが投じた外角低めへの74マイル(約119キロ)のスライダーに、両肘を伸ばしバットを差し出すようなスイング。最後は右手1本でコントロールした打球は、前進守備の一塁手左へ転がり、三走ジャック・ウィルソンを本塁に迎え入れた。

 「(今年は)足を使えるランナーが多いですから。打席の中でも意識がちょっと変わりますよね。抜けなきゃいけないと思うのと、何とか当てればっていう思いとはちょっと違いますからね。そういうちょっと幅はあの打席でもありましたかね」。第2打席で一塁への内野安打を放ち敬愛するマルティネスの通算安打数2247で並んでおり、球団トップに躍り出た。

 新記録が迫っていることは知っていた。数字にスポットを当てる周囲とは対照的に「(記録は)大きなことなんですけど、今日のゲームであそこの場面が一番大事な場面でしたし」と冷静に振り返った。

 白地に黒のストライプのボタンダウンシャツを身にまとい、しみじみとした口調に変わったのはマルティネスの人柄だった。「技術に関してはたくさんありますけど…。僕が2年目にヤンキース戦でフェンスに膝を当てて2試合ぐらい出られなかった。そこで、ケージでティーをやってた時に僕の姿を見て喜んでくれてたのが僕の中では一番残ってますかね」。もっとも、卓越したマルティネスの打撃に関心を抱かないはずもない。

 「こちらにはポテンシャルの高い選手はいっぱいいますけど、それによって、技術を練り上げるという行為ができない人が多いっていう印象なんですけどね。その中で、エドガー・マルティネスっていうのは技を常に磨いてた。だからヒット1本の味が違うというかね。味がそれぞれあるという印象でしたね」。希代のヒットメーカーが育んできた技術の定義はマルティネスにも通じるものがある。自分と違う右打者には多くを語らないが、偉大な先輩をよどみなく評するのは「自分だけの技術」を体得したところにある。球団34年の歴史で1位の座に就いたイチローの視線はまた次の1本へ向かい続ける。【木崎英夫通信員】