今季の所属が決まらないまま渡米した松井秀喜外野手(37=アスレチックスFA)が自主トレを再開した。22日に自宅のあるニューヨーク入りし、翌23日からニューヨーク州内の施設で「1人キャンプ」に突入。24日は打撃練習で262スイングを振り込んだ。松井が調整のペースを上げる中、移籍市場ではインディアンスが指名打者(DH)兼外野手、ツインズが左の強打者の獲得に動く可能性が浮上した。

 汗だくの松井が、重さ1キロの練習用バットを黙々と振り続けた。たたきつぶすように放たれた痛烈な打球がセンター方向へ次々と飛び、打撃投手は思わず防護ネットの後ろで身を縮めた。ニューヨーク入りして3日目。まだ時差ぼけも残るはずだが、「順番待ちがない。打つだけならキャンプより打てる」と262球もの「特打」を敢行した。

 孤独な自主トレを続ける。昨年12月28日に帰国し、初めて去就未定のまま越年した。都内の練習拠点で精力的に体を動かしながら新天地の連絡を待ったが、古巣ヤンキース、レイズ、オリオールズなどDH補強に動いていた移籍候補先にことごとく振られ、22日に成田空港から無言で渡米した。空港関係者8人に身を守られながら搭乗ゲートに向かう姿は、置かれた立場の厳しさを暗示しているかのようだった。

 ただ準備を怠るわけにはいかない。ニューヨークの自宅に戻った翌23日から練習を再開。朝はジムで体を動かし、補強運動の後、打撃練習の開始は午前10時半。さらにゴロ捕球など午後0時半にいったん練習を切り上げて昼食を挟んだ後も、再びジムで動く。

 28日のホワイトソックス野手組を最後にメジャー全球団がキャンプインする。さすがに松井も「大事なのはキャンプと同じ緊張感を持つこと。同じ練習はできる。ただユニホームを着ずに1人で緊張感を保つのは難しい」と不安は隠せない。救いは良好な体調面。持病の膝痛に悩まされることなく、状態はここ数年で一番いい。去就決着は3月以降にずれ込む可能性が大だが、「成績が下がれば起こり得ること。自分の力で切り抜けるしかない」と朗報が届くことを信じている。