<マリナーズ3-2タイガース>◇7日(日本時間8日)◇セーフコフィールド

 マリナーズのイチロー外野手(38)が解説者ばりにハイライトシーンを振り返った。タイガース戦の9回、2点差を追いつき3-2で逆転サヨナラ勝ち。代走で決勝ホームを踏んだ川崎宗則内野手(30)の好走塁を絶賛した。イチロー自身も同点ホームを踏むなど1安打1得点。2番手で登板した岩隈久志投手(31)が3回1失点と力投、マ軍は日本人そろい踏みの活躍で3連勝を飾った。

 川崎がマリナーズ劇的勝利の立役者になった。2点差を追いついた9回無死二塁で代走出場。送りバントで三進し、ジェイソの放った右犠飛で本塁生還に成功。あっという間にできた歓喜の輪の中で、もみくちゃにされた。「体に任せただけ」と多くを語ろうとしない川崎に代わり、試合後イチローが“解説者”として状況と意図を説明し始めた。

 イチロー

 今日はムネ(川崎)の最後のプレーでしょう。すごいプレーですよ。あの中にものすごい情報があって、やらなきゃいけないことがたくさんあった。まず、コンタクトでゴーの動きですから。ゴロならセーフになる、いいスタートを切るイメージ。それはもうギャンブルなんで。

 川崎は打った瞬間にスタートを切る、いわゆる「ゴロ・ゴー」で本塁へ向かっていた。飛球と分かって、慌てて急停止。三塁へ帰塁後は、余裕がないままタッチアップした。素早くトップスピードに乗った。

 イチロー

 深いフライなら問題ないですけど、今日みたいに浅いフライで、ああいう形で戻って。最終的に(走路を)真っすぐじゃなくて(左右)どちらかを選んで、正しい方向を選んだ。全部こなして、最終的には(ベース)手前でスライディングをするというチョイス。スーパープレーですよ。なかなかできない。

 三塁線上に走っていれば、タイミングはアウトだった。川崎は捕手の動きによって送球がわずかに三塁側にそれたことを瞬時に判断。回り込んで滑り込み、捕手のタッチを数十センチの差でかいくぐった。よくある犠飛による好走塁という以上の、判断力とパフォーマンスが凝縮されていた。

 イチロー

 経験とセンスが融合したプレーという感じ。僕は難易度の最も高いプレーの1つだっていうことがよく分かるので。しびれるプレーですよね。

 8回まで0-2で敗色濃厚だったが、最終回は1安打で3点を奪った。イチロー自身はタイガースの右腕ドテルの制球難につけ込んで四球を選び、モンテロの二塁打で同点ホーム。そして最後を締めた弟分の川崎が、投げる、打つだけではない野球の醍醐味(だいごみ)を魅せた。質の高いプレーに飢えているイチローだけに、いつになく冗舌だった。【木崎英夫通信員】