<マリナーズ3-5エンゼルス>◇26日(日本時間27日)◇セーフコフィールド

 【シアトル(米ワシントン州)=木崎英夫通信員】マリナーズのイチロー外野手(38)が生涯初?

 の赤を基調としたユニホームでエンゼルス戦に出場。慣れぬ赤ヘル姿で打席に立った。恒例の“ターンバック・ザ・クロックデー(時計の針を戻す日)”に臨み、半世紀以上も前にタイムスリップ。55年当時、シアトルに存在したマイナー球団のユニホームに袖を通し、打撃では4打数無安打に終わったが、3時間7分の戦いを新鮮な風景から楽しんだ。

 西海岸にまだ大リーグ球団もなかった時代に、「赤ヘル」イチローがタイムスリップした。本拠地にはポール・アンカの「ダイアナ」やデル・シャノンの「悲しき街角」など50年代のロックが流れ、チームロゴは「R」。50年代の強豪「シアトル・レイニアーズ」にあやかるつもりが、イチローは「膨張色(体の線が太く見える色)は嫌い。好きじゃないからねぇ」と違和感をストレートに口にした。

 オリックス時代、そしてマリナーズ、2度出場したWBCでもユニホームの基調はブルー系。この日は赤が基調のエンゼルスが青ユニホームで出場して勝手が違った。ベルトなどを同色で統一するなど、年に1度の恒例日にはトータルコーディネートにこだわるイチローだが、今年は気乗りしなかった様子。スパイク用の赤ひも、赤のエルボーガードとも「僕がリクエストしたわけじゃなく、アシックスさんが気を利かせて。まぁ、遊び心があって、僕のことを驚かせたいっていうのもあるんですよね」と、今年は契約をするメーカー側が準備したものだった。

 イチローのファッションセンスは打撃以上に奥が深い。3月の日本開幕戦で凱旋(がいせん)した際にはメガネの縁、ネクタイのストライプ、丈の短いパンツからのぞくソックスをピンクにそろえて空港ロビーを歩いた。「一事が万事ですよ。そういうことに興味があるかどうか。まぁ、普段の私服の姿を見れば分かるでしょ」。プレーにも生き方にも妥協を許さないのがイチロー流。打席では初回1死一塁の先制機で二ゴロ併殺に倒れるなど、3試合ぶりのノーヒットに終わり、チームも2試合連続の逆転負け。それでもイチローは「それはそれですごく楽しいというのはあるよね」と、チャリティーで出品される1日限りの赤ユニホームを楽しんだのは確かだった。