<アストロズ1-2レンジャーズ>◇12日(日本時間13日)◇ミニッツメイドパーク

 【ヒューストン(米テキサス州)=佐藤直子通信員】レンジャーズのダルビッシュ有投手(26)が自己最多の15三振を奪い、8回途中までノーヒットノーランの快投を演じた。今季初登板で完全試合まであと1死と迫ったアストロズを相手に、6回2死まで完全投球。8回1死から右ソロ弾を許し、ノーヒッターの夢は再び幻に終わったものの、8回1安打で15奪三振。球団タイとなるシーズン23試合目で200奪三振に到達するなど、圧倒的な存在感で12勝目を挙げた。

 ハイライト映像を見ているかのように、ダルビッシュが三振の山を積み上げた。「よく曲がってくれた」というスライダーで、面白いように空振りを奪った。15三振のうち12個の決め球がスライダー。「フルカウントでは、真ん中にスライダーだけ置きにいきました」と言い切ったほどで、自己記録の更新にも「確かに数は多いかもしれないけど、アウトの1つなんで」とクールに振る舞った。

 スライダーをピンポイントで制球する快投のカギは、抜群の集中力にあった。ワシントン監督と捕手ピアジンスキーが「今日のユウはロックオン(非常に集中)していた」と口をそろえたように、象徴的だったのが6回2死から直面した「アクシデント」だった。

 ビラーをカウント2-2と追い込んだ後の5球目。スライダーが低めに決まり、ダルビッシュもベンチに歩を進めた。が、判定はボール。6球目もボールで四球となり、この日初めての走者を出した。その直後、判定に不満をあらわにしたピアジンスキーが退場処分。ダルビッシュは「『コイツ何してんねん』と思いました」と動揺してもおかしくない場面だったが、球審からボールを受け取ると、次打者との対戦に淡々と準備を始めた。捕手がソトに代わっても「試合や配球を見ていたと思うし、すんなり入ってくれました」と、2死二塁を三振で切り抜けた。

 1年前の8月、3試合連続で6失点以上を喫するという人生最大のスランプを脱した。当時の課題の1つが、マウンド上でのメンタル制御だった。登板中に感情をあらわにし過ぎることを気にした球団のスポーツ精神医から、アドバイスのメモをもらったこともある。過去にとらわれず、次の1球を狙いどおり投げることに集中する-。簡単なようで難しい技術を体得した。

 8回1死から、伏兵の6番捕手に1発を浴び、またも偉業達成はならなかった。それでも「1勝は1勝なので、チームを勝たせることしか考えていなかった」と、8連勝で首位固めに貢献。夢の輪郭線は前より濃く太くなっており、ノーヒットノーランが現実となる日は、すぐ近くまで迫っているのかもしれない。