覚悟を持って、屈指の名門球団を選んだ。ヤンキースとポスティングシステムを使って移籍合意した楽天田中将大投手(25)が23日、コボスタ宮城で会見した。7年総額1億5500万ドル(約162億7500万円)という破格の大型契約を結んだが、重圧に負けずに自分のプレーを貫くと決意表明。「世界一」を目標に掲げ、海を渡る。

 会見開始30分前から、コボスタ宮城3階の臨時記者室はギュウギュウ詰めだった。テレビカメラ19台に、報道陣は100人を超えた。米国のCNNも駆けつけた。午後3時きっかり、ピンストライプのスーツを着た田中が登場した。フラッシュで顔が真っ白になり、一礼して着席。やや表情は硬かったが、はっきりと切り出した。「このような場を設けていただき、楽天イーグルスに感謝したいです」。思いの丈を語り始めた。

 なぜ、ヤンキースを選んだのか。率直な質問に「最大限に評価していただきましたし、また世界でも有名な名門チーム。その中でいろいろなことを感じながら、違った気持ち、違ったモノを感じながらプレーできたら」と答えた。未知の世界に飛び込むことで「野球人として、前とは違った刺激を受ける」と、自らに期待する口ぶりだった。

 ヤ軍を選んだのは、甘い気持ちからではなかった。誰もがうらやむピンストライプ。そんな周囲の幻想を「憧れは正直、全然なかった」と斬り捨てた。むしろ「メジャーで一番と言っていい歴史がある名門チーム。今までの野球人生の中で、そういう環境でプレーしたことはなかった。違ったところでプレーするのもありかな」と軽く流した。だから、破格の金額に「皆さんと一緒」と驚きつつも、「重圧」という言葉には敏感に反応した。

 田中

 そういったことばかり考えすぎて自分らしさを失いたくない。とりあえずは今までやってきたプレースタイルや持ち味を出して、そこから臨機応変に適応していきたい。

 大型契約に対する「責任」には、こう言った。

 田中

 背負えるものは背負いますけど、背負ってつぶれるようなことだけは絶対したくない。自分のペースを守ってしなきゃいけないこともある。そういうのに乱されてやることは逆に悪循環。自分のやれることをやる。金額でやるべきことが変わるわけじゃない。金額が低ければこれくらいでいいというわけでもない。

 楽天での7年間もそうだった。開幕戦など節目に臨む心境を聞かれると、決まって「開幕戦だから頑張る、じゃない。いつも、やれることをやるんです」と言った。結果を出せなかったら-。そんなちんけな思いにもとらわれない。大事な会見日も、午前中はしっかり練習した。今、やることをやってきた。その積み重ねで、メジャーの扉を開いた。「勝手なイメージだけど、こっちで失投して単打で終わっていた部分が長打や本塁打。パワーが全然違う」と承知の上で、目標は「世界一です」。決意と覚悟を胸に、堂々とニューヨークへ行く。【古川真弥】